八咫烏 〜神になるか、人として戦うか〜
秀零
プロローグ
私達は、何処にでも居て
何処にも居ない……。
人々は知らない。
この世界の裏で、
終わりを迎えようとしている未来があることを。
「……やめて……お願い……これ以上奪わないで……」
静まり返ったビルの屋上。
制服姿の少女が、震える手でフェンスを掴みながら、夜の街を見下ろしていた。
遠くで響くサイレンの音。
誰も気づかない。
彼女が、今ここで終わろうとしていることに。
家族を失ったあの日から、何もかもが色を失った⸺。
「……もう、いいよね……」
そう呟いて、少女――神楽天音は、踏み出そうとした足に力を込めた。
その時⸺。
「……死ぬな」
低く冷たい声が、闇の中から響いた。
驚いて天音は振り返る。
そこには、月明かりに照らされた青年が立っていた。
黒いコートに、無表情の瞳。
その存在は、夜の闇に溶け込み、この世のものとは思えなかった。
「俺の名は紫苑。
……世界を変える気はないか?」
「え……?」
意味がわからない。
世界を変える?
そんなこと、私にできるわけが――。
青年は無言で手を伸ばす。
「来い、お前には、その力がある。」
月明かりに照らされた紫苑の瞳には、冷たさの奥にかすかな哀しみと決意が宿っていた。
彼の手を取った瞬間、私の世界は音を立てて崩れ、そして新しい世界が始まった⸺。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます