② ニポとパシェ





「オカシラああああっ! おきましたあああっ!」


 そんな声で目を覚ますと、そこは柔らかなベッドの上だった。


「あ・・・。あ、きみは確か・・・ふごっ。」


 ずきんと痛む左肩を押さえて目を遣った先には清潔な包帯が巻かれている。

 薬草なのだろう、揉みほぐされた葉が傷口に当てられ包帯を黄色く濁していた。


「気がついたかい。ならまず湯を浴びてきてくんないか? 顔と脚は拭いてやったけどね。・・・まぁいいや。とりあえず行きな。パシェ、案内してやって。」


 そう放つ口調は厳しかったものの、そのやたらと露出の多い女にあまり感じたことのない空気を覚えて心音は強く高鳴る。恐怖や緊張といったものではなさそうだが。


「うぐ・・・わ、かったよ。」


 どうにも痛む体を起こし立ち上がると、それが甘い香りのようなものであることに鼻が気付く。そんなキペに構うことなく先をゆく女児は声を張る。


「ほら、こっちだーっ!」


 そして例の魚っぽい帽子をかぶった二の腕と目しか出ていないパシェと呼ばれる少女について歩くと、手足や顔にも傷があったのだとわかる。また、ところどころ薬葉の汁の乾いた後や色が残っていることからそれらにも手当てしてくれたこともわかる。


「ここだーっ! あ、ちゃんとゆぶねにはからだあらってからはいるんだぞっ! アタイここでみはってるかんねっ!」


 見張りにしては頼りないが、そもそも今は逃げるつもりはなかった。


「うん・・・わかった。」 


 そうして水避け布の仕切りを引き包帯を解いて衣服を脱ぐと、キペはどこからか流れてくる湯を集めた箱にゆっくりと浸かった。


「あ。」


 体は後で洗えばいいや、と温かい湯の中でキペはしみる傷を堪えながらも頭の中を整理する。

 巨人がいて、掴まって、捕まって・・・そして、今に至るのだろうか。

 ん?そういえばなんでだっけ、と思い至ったところで目が醒める。


「そうだっ! こ、ここは、村を襲ったやつらの根城じゃないかっ!」


 ばしゃん、と湯船から立ち上がってみたものの固めた拳もこの見事な裸一貫の前ではまるで無力だった。


「・・・。ふーんー。といってあの子を人質にするのも・・・はあ、アヒオさんに殺されちゃうな、そんなことしたら。うん、したくないしなあ。でもなぁ、どうにかしないとマズもんなぁ。

 あ。・・・はは、思いついた気分になったら何か思いつくかなーと思ったんだけどなぁ。ふふふ、ダメだなぁ。・・・はぁー。それにしてもいい湯だなぁ。」


 だんだん気持ち良くなってゆったりしてしまう。

 そういえばこうやって湯船に身を委ねるなんてなかったもんなぁ、あ、カーチモネさんのところで泳いだなあ、あっはっはっ――――


「はやくでろっ!」


 と愉快になっていたところで外から催促の怒声が飛んでくる。

 もう少しゆっくりしたかったキペだが仕方がないので出ることにする。


「はあ。いい湯だったよ。着替えまで・・・って、これなんか、その――――」

「お揃いは当たり前だ。あんたはあたいに拾われたんだよ。わかるかい?

 今日からあんたはっ、この『ヲメデ党』の下っ端になったのさっはっはっはっは。」


 待ち切れなかったのだろうミズネ族の女は笑いながらキペの左肩をばしばし叩く。それに倣ってパシェもキペの太ももを叩いて喜んでいる。歓迎されているようなのでキペもてへへと照れながら舌を出す。

『ヲメデ党』党員・キペの誕生だった。


「いたたた。いやっ、違う、あ、・・えっと、このーっ! ハユを、違う、霊像を返せっ!」


 ややまだ混乱気味のキペは相手のペースに呑まれやすい弱点が今回も仇する。


「ふーん。とりあえず動けるなら茶でも飲むか。チペ、ってんだろ、あんた。」


 ひょい、と手鎚を取り出して握りに彫られた文字を女は指差す。

 祖父・タウロの名前がその裏側にあったのだが長年使っていたため磨耗していた。新たに刻まれている自分の名はナナバの村で休んでいた時に彫ったものだ。


「あ、違う違う。キペ、っていうんだ。キペ=ローシェ。」


 話半分に陽の当たる部屋へとたらたら歩いていた女もそれを聞いた途端、立ち止まり目をひん剥いて振り返る。


「はあー? なんであんたに冠名があるんだよっ! それになんだ、キペって。ったくショボい名前だねえー。」


 冠名・家名とも呼ばれる名前は古くから名家にのみ許されたものだった。


「あ、いや冠名じゃないよ。屋号みたいなものなんだって。

 ・・・あのさ、だったらきみは何て名前なんだよ。」


 自分よりも五つも六つも若そうな娘にショボい名前呼ばわりされたのがおもしろくなかったようだ。


「ニポ。」


 赦してあげることにした。


「おいちぺ、まめちゃとこうばちゃ、どっちにするんだあっ!」


 と居間のテーブルに就いたキペに尋ねているらしいが、どちらかといえば怒られている気もする。だがかわいらしいのでキペはこれも赦してあげる。


「だから、キペだってば。」


 だので説明しなきゃと思い、花の挿してある花瓶に指を入れ水で名前をテーブルに書いてみせる。


【 chype roc կe 】


「ね?」


「ね? じゃないだろ、あんた。それよりなんだ、【կ】って。間違ってないか?」

 

 そうキペがニポに怒られて答えられないでいるため、パシェはとりあえず香葉茶を選んで三杯ぶんテーブルに用意する。


「え、わかんない。なんかこんな風だったけど。他の人の名前で見たことないなあとは思ってたんだ。ははは、なんだろうね、これ。」


 わかんなくなっちゃったので笑っちゃう。そしてまあいいじゃないかとキペはおおらかに香葉茶を飲みながら持ってきてくれたパシェにありがとうを告げる。やや表現の仕方に問題のある幼女は照れながらぱしぱしとキペの腕を叩いて喜んでいた。


「・・・んー、あんたんトコの部族、読みが独特なのかねえ。・・・ローチェ、ロクヒェ、ロク・・・

 うほぅっ! あんたっ、この変な字ってさ、【ly】がくっついたヤツじゃないっ?」


 お茶も用意できていい子なんだねー、などとパシェとほのぼのしていたキペの左肩をもはや狙ったようにむんずと掴んで振り向かせるニポ。カーチモネ邸でも同じ箇所をがっつり掴んでいたが本人に悪気はないらしい。


「いたたたた。え、わかんない。僕はどっちでもいいよ。ねー、パシェ。」


 ところがそこで、ばちん、とその和やかな空気を断ち切りニポは立ち上がる。


「チペ。あんた、この意味がわかんないのかい? 屋号だかなんだか知らないけどね、あんたが何かを継いでるんだよ。「ロクリエ」の、何かを。」


 昔話に出てくる、それは伝説上の魔法使いである台王の名前だった。


「ん? なに言ってるの、ロクリエって。・・・んん、まあそう読めるだろうけどさ、子どもでもいないって知ってる魔法使いのことでしょ? 実在もしてないし、そもそも〔魔法〕自体が存在しないって教舎で習わなかったの?」


 民話や寓話に用いられるそれは、今日の発達したク=ア学の論理的な証明によって明確に否定されている。

 また、ひと頃〔魔法〕崇拝が台頭しヒトビトがすがった時代があったため統府直轄の機関が当該現象や信奉される地区・遺跡を発掘調査したことがあったのだが、やはりそこでも確固たる証明が導き出されず信奉者たちは徹底的に弾圧され、〔魔法〕を信じること自体が次第に衰滅していった歴史がある。


「バカかあんたは。そんなもんヤツらの都合に合わせて吹聴された出まかせに決まってんだろ。

〔魔法〕は存在する。あたいは信じてる。だから手伝え。チペ。」


 んー困ったなあ、と思い、そうだ困ってる場合じゃない、と気付く。

 のんびりした田舎で育った青年は頭の回転ものんびりしている。気の毒な話だ。


「ダメだっ! き、きみらはヒト殺しなんだぞっ! 胸を刺された、お、じいさんはっ!

 き、きみたちを捕まえるのは、僕の仕事じゃない。

 ・・・だから今は霊像を返して。傷の、手当てを考えても、それでトントンだよ。」


 拳に力を入れても痛む左肩は皮肉なほどに傷が塞がっている。

 だから、やりきれなかった。

 殴りつけたり後ろ手に縛ったりするくらい男だからできるだろうが、心がそれを許さなかった。


「お、ちょっと待ちなチペ。胸を刺されたってなんだい? 瓦礫の下敷きになったとかならまだわかるけどさ、あたいらはそういう武器は持ってないぞ。コマたちがいるから。」


 ん?となって訝るニポに、え?となるキペが目を丸くする。


 確かにナイフなんて小さな武器は要らないだろうし、物盗りなのだからそもそも殺す理由がないはずだ。


「じゃあ、え? なんで? どういうこと? 

 ・・・ねえニポ、聞かせてよ。なんで神像や霊像を狙ったか、なんできみたちはバファ鉄を欲しがってるのにあのとき奪わなかったのか。

 ・・・僕は、もしかしたら何か思い違いをしているのかもしれない。」


 話がややこしくなってきたと悟ったパシェは台所に向かって簡単なおやつと茶のおかわりを仕度する。キペもニポも、それには気付かないほど見つめ合っていた。


「思い違い、ねえ。・・・ふー。んなら話してやるよ。

 あたいらはあん時、モクって党首の指示であんたの村へ向かったんだ。家を倒しちまったのは手違いだったし悪かったと思っちゃいるが。

 それとバファ鉄はコマたちの部品に必要な素材だからカーチモネんトコにもらいに行ったんだよ。ココから近いのはあんたの村よりカーチモネんトコだったからねえ。


 んでその前、セキソウの村で小競り合いになってたのは見てただろ、『スケイデュ』がどっからか湧いてきて党首のモクじーさんがしょっぴかれたのさ。


 そのあと、あー、林で会ったね。そんときゃあんたらが『スケイデュ』とつるんでるのかと思ってたし、なによりヤシャが故障してたからさ、ちょっと気が立ってたんだ。


 でも今こうして話してみて、あんたはどうやらウチの党首のことは知らないんだろうなってわかって、まあいーやと。」


 少なくとも、殺意はなかったらしい。


 そして「神像と霊像の強奪」はモクという党首の指示であって彼女たちはその目的を知らないようだ。


「・・・そうだったんだ。それに村に来てた警邏隊みたいなのは『スケイデュ』だったのか。どおりで見たことある紋章だと思った。

 ね、それより霊像はどこ? あれだけ返してもらえばきみたちのことは忘れるから。」


 腑に落ちないながらひと通りは納得できた。


「え、売っ払っちゃったよ行商人に。党首もいないし、霊像も三つくらいしか手許になくなっちゃったからさ、いーやって思っ――――」

「よくないよっ! 何してくれてんのニポっ!

 ・・・あの、なんとなくだけどさ、売ったヒトって「~なや」って言うチヨー人じゃなかった?・・・そう。やっぱり。

 はあ、どうしよう。あっ! ダメだ、こうしちゃいられない。僕は風読みさまのお供をしなくちゃならないんだっ! ここ、どこ?」


 そこへ甘く香ばしい匂いを漂わせ、香実と呼ばれる果物を焼いて蜜をかけた菓子が運ばれてくる。短時間で調理も容易なのでパシェがよく作るお茶受けだ。


「あのさチペ、あんたなんであんな腹黒いのと一緒にいるんだい? 村にもいただろ、そういえば。

 はっはっは、実はあいつなんじゃないのかい、あんたのじーさんを手にかけたヤツって。

 だってあん時あの小屋にいたのって風読みだけだっただろ?」


 くにゅ、とやわらかく口にほどける茶菓子をおいしそうにニポは食べている。

 頭がグラグラとするキペは、その胸騒ぎにぐっと歯を食いしばった。


「・・・そんな、そんなわけないじゃないかっ! 風読みさまはおやさしい方だっ! 僕や仲間を大切に思ってくださる、大きな立派な神官さまなんだっ!

 なんだよ腹黒いなんて。風読みさまを知りもしないくせにっ!」


 いつもいつもキペを勇気づけ、歩かせてくれた。

 そりゃアヒオの悪行を見逃したことはあるけど、・・・などと思い巡らせてなお、家の中にいたのが祖父タウロと風読みだけだった事実は覆せない。

 それが、その一点だけが、キペに深い濃い影を落とした。


「おやまー言ってくれるじゃないさ。ま、専らの噂だからあたいも確証はないからね。

 それよりあんた、お供とか言ってたけどなに、巡礼でもすんのかい? ってかさチペ。あんたおそらく世間知らずだろ。ちったあモノを斜に見ないといつか痛い目みるぞ。」


 たべないのかっ!と隣でパシェが怒鳴るので、いいよ、と空になった少女の皿と取り替えてあげる。パシェは、たべちゃうぞっ!と怒鳴って食べ始めた。

 こんな長閑なやりとりだけを、どうやら見ているだけでは済まされないようだ。


「ああ、世間知らずだよ。だけど、そんな僕のハユを、弟を探す聖都までの道のりを一緒についてきて下さった方なんだっ! 悪いヒトなわけないじゃないかっ!」


 風読みを悪く言われるのはそれでも嫌だった。

 出来の悪い自分を支えてくれた恩人なのだから。


「なら逆に聞くけどさ、なんで風読みともあろうモンがあんたのおねだりについてきたんだい?

 困ってるから? 

 冗談じゃない、貧困をはじめ差別や飢え、いろんなモンが世の中にあって困り果ててるヤツなんてゴマンといるんだよ。それくらいわかるだろ?

 それら全てにいちいち手を差し伸べてちゃ仕事にならないしキリがない。

 じゃあなんであんただけは特別か?

 神官位のあの男が、伝説の魔法使い・ロクリエの名を継いでるあんたを何かに利用しようって思うのが筋じゃないのかい?」


 返す言葉が見当らなかった。

 悔しいほどに、そう考える方が正しいのだ。


「だけど・・・だけど、魔法使いとか屋号のことはわからないけど、でも、やさしい、ヒトなんだ。」


 言い訳のようにしか響かない自分の言葉が、虚しいほど悲しかった。


「しっかしあんたも学習しない男だねえ。〔魔法〕はあるってのに。ったく。

 どうあれ今からあんたはあたいの子分だからね、ちょっと働いてもらおうか。男手が欲しかったところなんだよ。来な。」


 そう言って立ち上がったニポにパシェが続いて手招きしている。

 結局ここがどこなのか判らないし旅支度も出来ない以上、無闇に逃げ出すのは賢明ではなかった。

 適切な対策も講じられないキペはその後を追い、土壁の通路をついていくことにする。



 かこん、かこん、かこん。

 地階になるのか、階段を降りてゆくとそこからは雰囲気が違っていた。

 壁は灰色の石みたいな物なのに漆喰のようにきれいに塗り固められている。ひんやりとするその階を先に進めば今度は木でも石でも鉄でもない素材でできた戸がいくつも並び、ところどころには透き石まではめ込まれていた。トントンと叩くと、しかしそれも透き石ではなかった。


「こっちだよチペ、きょろきょろしなさんな。」


 そうして聖都やカーチモネ邸でも見たことのない素材に気を取られていたキペがその部屋に入ると、見慣れた、見慣れないモノがあった。


「巨人だ。・・・今は休んでるの?」


 筒型大槌/ハサミ巨人と箱型のギザギザ円錐巨人は壁際に立ち尽くし、三角錘の帽子をかぶったような巨人は上からのロープと組まれた棒で支えられている。


「ヤシャは今、修理中なんだよ。動かそうと思えばできるけど疲れるんだ。」


 あれほど荒々しく動き回っていた巨人が黙って佇んでいる光景は、ただただ息を飲むばかりだった。


「とはいえあんたもウチの党員だからね。紹介するよ。

 この四角いのがコマ号、丸いのがヒマ号、んで修理してんのがヤシャ号。

 ヤシャだけはあたいが作ったんだよ。

 で、こっちのちっこいのがパシェで、党首代理のあたいがニポ。三下のあんたがチペで、党首救出をひとまずの目標とした我らが『ヲメデ党』ってね! 

 ま、他に二人いたんだけどこんなトコかねえ。よろしく頼むぜ、三下チペ。」


 巨人たちのネーミングに関してはノーコメントだがもはや完全に組織に取り込まれてしまっているらしい自分の位置関係と名前については一物のあるキペだった。


「彼らは、なんなの? このギザギザとか。」


 人形、と呼ぶには大きすぎるし、体のほとんどが金属で出来ていたので操る、というのも理解に苦しむ。よくよく考えると謎だらけだった。


「〔ろぼ〕っていうんだっ! んで、コマのみぎては「どりる」だっ! おぼえとけっ! ちぺっ!」


 そういえばヒナミも〔ろぼ〕とか言ってたなと思うも、やっぱり意味がわからないキペ。


「あたいもよくわかっちゃいないんだけどね、ヒトのように動くんだよ。〔こあ〕を組み込むとさ。ま、作るっていっても元々あった部品を組み合わせたり加工しただけなんだけどねえ。

 一度はモクのじーさんと他の素材で作ろうとしたんだけどさ、「属性」は知ってるだろ、あれの関係か親陽性の物質じゃないと力が伝わらないんだ。むかし疎陽性の金属を使ったらぶっ壊れたこともあったねえ、はっはっはっは。

 性質が親陽性の金属でもやっぱり耐久性を考えると硬質なバファ鉄じゃないとすぐ傷んじまうんだ。

 大事にしないとね。こいつらは手塩にかけて作った子分たちだからさ。」


 かつて教舎で属性について習った時、物質にはそれぞれ親性・疎性があると教わった。しかしそれらの相関性は単純な構図ではないためテストに向けた暗記にてこずった記憶がうっすらと懐かしく思い出されてしまう。


「ふーん。あのさニポ、あの・・・コマってさ、変形したよね。あれも〔ろぼ〕だからなの?」


 だいたい〔ろぼ〕という概念が掴めてきたキペは持ち前の好奇心を全開にする。


「ああ。とーちぱねぃ、ってんだけど、それに操る者である「おぺれった」のあたいが触れて、「ぎや」を動かせば変形するし動かすだけなら声で命令もできる。

 なあチペ。解古学のアホたちは信じてないけどさ、古代以前の神代にはいたんだよ。コマやヒマやヤシャみたいなのがぞろぞろとさ。

 後で見せてやるけどそういう上代や古代、神代の本がここにあってね、いざーかしもぶ、って有名なク=ア学者が言ってるんだ。「ろぼと三原則」ってやつで。「ろぼとは、①気合いで動き、②変形し、③合体する」って。

 な、すごいと思わないかチペ。だから手伝え。」


 ああそうか、コマたちは気合いで動いていたのか、と納得するキペ。いつでも心は真っ直ぐなのだ。


「うん。・・・あのさ、ニポ。・・・いや、なんでもない。」


 いろいろなことが突然キペの前に押し寄せてきてしまってひとつひとつを乗り切るのがやっとだった。風読みたちやハユのことはもちろん考えていたが、まだ疲れが残っているのもあって頭が上手に働かないようだ。


 なにはともあれ寝泊りできるこの『ヲメデ党』にもう少しだけ厄介になろう、そうキペは決めてヤシャ号の元へ歩いた。

 まず、自分を整えなければならないから。

 その心を、その体を。

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