情報求/不思議不動院/氷室町/赤坂町

 初めに、本文は私の多分な主観に基づいているので、どなたからか怒られたら削除するということを此処に明記する。

 正直、人様に話せるような内容ではないと思う。

 しかしあの時の私は何かセンサーのようなものが尖ってたらしく、どんな些細なことも気になって仕方がなかったからきっとこの寺を面白く思ったのだろう。

 不快になられた方がいられましたら、ご指摘お願いします。


【不思議不動院】は京都府赤坂町に在る寺である。

 場所としては金閣寺の裏と言うのが分かりやすいだろう。

 金閣寺の表の入り口、人通りの多いエリアから南に向かって少し下がる。すると金閣寺に沿う形で西向きの道があるのでそのまま進む。そうしてぐるりと裏に回り込むようにすると氷室町である。

 全体的に傾いた印象があり、それ故か歩いている人は滅多に見ない。真夏であったこと、台風が近いこともあってすれ違うのは車ばかりであった。

 私が初めに【不思議不動院】を参ったのは二年ほど前のことである。

 暇を持て余し、何を目指すわけでもなく自転車でうろうろと散歩をしていた時のこと、偶然氷室町に迷い込んだ。登りの坂道を目指し、この先に一体何があるのだろうと心を躍らせ精いっぱいにペダルを漕いだ。

 そうして辿り着いた場所で不可解な印象を抱いたがために、先日また赴いて、やっぱり頭を捻る自称が諸々在ったので本文を記述するに至った。

 氷室町周辺(何処からが隣接する赤坂町であるかはわからないので、一応ここでは氷室町と記述する)には、どうも社が多い印象がある。さっと思い出せるだけでも、身代不動王院、浪切不動などが在る。

 ただし私はそれらに気を取られることはなく、ただ真っ直ぐに氷室の坂を昇り続けていた。

 その最中、しかし目に刺さったのは【不思議不動】という看板であった。

 

【不思議不動】

 私の頭は百のはてなに満たされた。

 不思議とはなんだ? 不動と言うからには神仏に関する場なのだろうか? 人家の群れの向こうに寺があるのだろうか? などと、普段寺の看板なんて印象には残らないのだが、興味が惹かれて仕方がなかった。

 

 私は一切迷うことなく不思議不動院の一帯に辿り着いた。なに故かと言えば、丁寧に看板が在ったからである。迷う衆生を救うということに繋がっているのかもしれない。

 しかし不思議であったのは、「嗚呼、目指していたのはこの辺りだな」と不思議不動院を見る前からなんとなくわかったことである。

 原因として考え得るのは、山を背景にした住宅街の一角に私と自転車が入った瞬間、ひどい静寂があったからだ。

 静かであると、明確に感じた。人の気配は一切しなかった。

 

 不思議不動院はいたって普通の寺であった。調べてみると、戦後まもなく女性の住職が開いた場であり、冬至の日には「ん」の二つ付く食べ物を食べる『かぼちゃ大師供養』という慣例がある。別名に南京(ナンキン)と呼ぶかぼちゃは、不思議不動院においては大きな役割を持っており、冬至の日には炊いて振舞われると言う。(後に不思議不動院及び周辺について記述した情報サイトやブログなどを探したところ、「今年から冬至の日のかぼちゃ大師供養は中止になった」という記述も見られた。しかしその記事が書かれたのはコロナウイルスが流行していた頃であったこともあり、もしかしたら勘違いで行わなくなったと書いたのかもしれない)


 正式な名としては『大北山大宝寺不思議不動院』であるが、本尊の不動明王に参拝した結果、様々な不思議なご利益を賜ったために、住民からは不思議不動院として親しまれていると言う。

 不思議不動院の向かいには【天龍神大神社】が在る。鳥居を過ぎると、小さな沼の上に橋のように大きな石が繋がっていて、そこを通り過ぎると社が在る。聴くに、この沼は底なし沼であり安全のために松材を大量に埋め立てているらしい。

 今や水生昆虫がたむろする澱んだ池であるが、かつての写真ではずっと緑豊かであったことが伺える。また、オオサンショウウオも生息していたらしい。


 不思議不動院の話に戻る。

 院の看板には以下のように書かれている。

『眞言宗 

 不思議之谷

 水子供養寺』

 不思議不動院は水子供養の寺だった。

 水子。

 死産で世に生を受けられなかったり、幼くして亡くなった子の供養をしている場所だった。

 私は随分と静かな心地になった。

 一帯が閑静な住宅街であったことも起因して、なんだか泣きたいような気分に陥った。此処に何か怪しいだとか、面白いだとかで訪れた自分を酷く恥じた。

 しかし同時に私の心を急かしたのは、更にその先の景であった。

「なんという坂だ」

 不思議不動院、及び天龍神大神社は坂の麓に在って、角度は体感にして40度もあった。

 瞬間むくむくとケッタイにも私の中で膨れたのは好奇心であった。

 先に何が在るのだろう?

 私は自転車を脇に抱えるようにして坂を昇った。

 

 不思議不動院やその周辺に関しては明確な資料がとても少ない。一応、観光の為に訪れる方もいらっしゃられると思うので『不思議不動院』とツイッターで検索してみたところ最終のツイートは2023年のものだった。

 此処で幾つか気になった点を先に記述しておきたい。

①不思議不動院は水子供養の寺である(私のツイッターアカウントに於いて看板の写真を掲載)が、『不思議不動院』で知らべてみても水子供養の内容がさっぱり出てこない。ご利益として知られているのはかぼちゃ大師に繋がる無病息災であったり、中風・骨の病気に関するものが多い。

②日本では古来より死産で世に生まれ出ずることのできなかった子どもを、もう一度世に生まれてきて欲しい、とか、十分に人間として扱わないだとかで、供養をしないことが多かった。不思議不動院は真言宗に属するため、広く様々な活動を行っており、その一環として水子供養も受けているようだが、本尊の不動明王に水子供養のご利益は無い。

③本文最後の坂の上には『お狐山』とされる場所がある(大北山とも呼ぶが範囲が広すぎるので同一視していいのかは不明)。此処にはお狐山参道口なるものがあり、先にはお狐稲荷社が在る。お狐稲荷社には様々な地蔵が祀られており、その中には水子地蔵も存在する。つまりここには明確に水子供養のご利益がある。(関連する大きな看板アリ、ツイッターにて画像掲載)

 看板には不思議不動院の名も記載されていたので、此処の管理は不思議不動院が持っていると考えられる。幾つかの資料に依ると、お狐稲荷社は不思議不動院の奥の院であり、関連性が在ると言う。

 しかし不思議不動院を開いた当時の住職は「何も無かった地に聖地を開いた」とされている。(https://www.kyotonikanpai.com/spot/03_03_kinugasa_omuro_hanazono_uzumasa/fushigi_fudo_in.php)(https://hotokami.jp/area/kyoto/Hmpts/Hmptstk/Dpptz/3239/7188/)


 だから考えられる時系列としては

 ↓戦後1945年初代住職の酒井さんが何も無かった赤坂町の場に不思議不動院を建てる(真言宗信仰ではあるが様々な仏や神を祀った)。

 ↓その一環として水子子守地蔵菩薩尊も祀り、奥の院としてお狐山のお狐稲荷社に水子供養の地蔵を置いた。

 となるわけであるが、その場合にはお狐稲荷社が不思議不動院よりも先に存在することになってしまい、「何も無かった地に聖地を開いた」という内容と若干矛盾する。

 だから「何も無かった地」という点を尊重するのであれば、不思議不動院がお狐稲荷社を開いたことになるが、この場合神仏習合が行われていることになる。

 狐の神には神道に基づくウカノミタマノカミが挙げられ、仏教においてはダキニ天が挙げられる。双方とも狐の神であるため、神仏習合の場合にも狐の神が祀られることは多々あると言う。

 しかし水子地蔵を祀るだけならば態々神仏習合の形を取って神社を建てるものなのだろうか?

 また、伝承にもブレが在るようで、不思議不動院向かいの天龍神大神社は元から龍神の住まう神聖な場所として誰も近寄らなかったところを不思議不動の住職が祀ったともされている。 


 お狐稲荷社の写真(2007年五月五日掲載なのでその周辺だと考えられる)の掲載されたサイトが在ったので以下に引用する。

(https://kaiyu.omiki.com/okitune/okitune.html)

 【1枚目の写真について】

 ──かつて鳥居が在ったことが伺えるが、2024年には無くなっている。鳥居の奥の看板の左下、寺社のマークも赤く鮮やかであったが、今ではほとんど剥げてしまっている。

【2,3枚目の写真について】

 ──私は道がまるきり獣道(木々に迷うことを防止するための印が結び付けられているくらいの山道)になった辺りで引き返してしまったので、もしかしたらその先にあったのかもしれないが、このような神社は見ていない。鳥居と同じく無くなったのかもしれない。

【4枚目の写真について】

 ──私が見た水子地蔵は、大きな一体の地蔵の周りに、まるで何かの種子のように小さな地蔵が、へばりつくとか覆うとかそんなレベルでくっついていたので、私が見たものとはだいぶ様が異なるように思われる。

 ただし、正直その辺りの私は帰りたくて仕方がなく、見ることも憚られるような心中であったために、勘違いである可能性は捨てきれない。


 機会が在ればもう一度不思議不動院に参ってお話を訊きたいと考えている。

 関連する資料を御存知の方がいらっしゃればご共有願いたい。





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