第4.5話 ドロセルの馬車の中にて
【ドロセル達の乗る馬車にて】
「何故ですか!ドロセル様!? なぜ彼を弟子になど……」
声を荒らげて怒るカイアに、終始笑みを浮かべているドロセル。
「奴の才は我が今まで見てきた子供の中でも群を抜いておる」
カイアは納得するはずもなく、ドロセルを訝しんだままだ。
「私のこの目を使っても彼は弟子にするほど子ではありません」
「その目では測りきれぬ。 強者にしか感じれぬ、凄みを持っておったのじゃ。 あれをあの歳で出せるとは。 まるで幾千もの修羅場をくぐったような目つきじゃった」
「分かりません。 彼の魔力量は平民か、それ以下程度のもの。 それに使える属性も無属性のみ……。 どう考えても才があるとは言い難いです!」
「ならば、受ければよいではないか」
「は、はぁ、 受ける?」
唐突にそんなことを言われ不思議そうな顔をするカイアを見て、ドロセルはいつにもまして楽しそうな様子であった。
「お前も一緒にクアドリア魔法学院の入学試験を受ければよいと、言っておるのじゃ」
「――こ、この私が一般の子供たち同様に学院に入れとおっしゃるのですか!?」
「歳は他の者と比べてお前の方が格段に上じゃが、その容姿なら簡単な変身魔法を使えば十分騙せるじゃろ! 我、学院長じゃし! 学院長権限の行使でうやむやにしてやるぞ」
「変身魔法に簡単なものはありません――じゃなくて! 私は世界最高の魔法使いから学んでおりますので、今さら普通の子たちと一緒に学院になど……」
「――ジャックは受けるぞ。 それにお前がそうやって奴を見くびっておると、いずれ奴はお前より遥か高みへ行くだろう。 いやもう既に上かもしれぬな」
今までの冗談めいた口調ではなく、低い声で、そう言ったドロセルにカイアは流石に我慢の限界がきたようだった。
弟子であるカイアは経験上、ドロセルがこんな風に声を低くする時は、冗談ではなく本音を言う時だと知っているからだ。
カイアははぁと大きなため息を吐いて、ほんの少しの間目をつぶり、何かを決心したように頷くと真っすぐドロセルを見つめる。
「いいでしょう、わかりました。 ドロセル様がそこまであの少年のことを評価するのであれば、この上級魔術師第二等級のカイア・アルロア、学院の試験を受けます! そこで彼がどれほどのものか見定めてやりましょう!!」
「――フン、良い返事じゃ。 彼から学んだことを忘れぬよう、ノート持参するとよいじゃろう」
意地悪そうにそう言ったドロセルにフンと鼻を鳴らしてそっぽを向くカイアだった。
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