第43話 帰還3次元世界
漫画を描こう 43
帝塚山先生は書斎兼寝室兼食卓の前で目覚めた。
「えーと、太宰府は何処へ行った」
周りを見渡すと、
「うーん、ヤンデルセンの姿もないな」
そこへ、高級であろう珈琲の香りが漂ってくる。
「おお、帝塚山君、目覚めたか」
声を掛けてきたのは、かの有名作家の司馬良多郎先生である。
「先生、いつの間に? それと太宰府やヤンデルセンは?」
司馬良多郎先生はこの世界でたった一人の帝塚山の支持者でもある。
「ああ、だいぶんと前に帰ったよ。帰る前に後片付けをして帰れ、それが良識ある大人のすることだ、って言ってやってね。まぁ君、私が淹れた特性の珈琲でも飲みたまえ」
「ありがとうございます、先生」
「彼らが言ってたけど、何度も起こそうとしたが全く目覚めなかったそうだな」
「ああ、夢なのでしょうか? 長い間、眠っていたようです」
「うん、寝言も言っていたそうで、この国は私が守るとか?」
「あ、いや、お恥ずかしい」
「うん、それでね、君が眠っている間に、そこの原稿を読ませてもらったんだが、申し訳ない」
「いえ、先生に読んでもらえるのは、とても幸せに思えるのです」
「うん、それで、ああ、珈琲を飲みながら聞いてもらっても良いんだよ。その漫画原稿だけど続きは描かないのかい」
「それが、書かないのじゃなくて、描けないのです」
「うん、それは残念だね。特に岩屋の話などは神秘性があって良いと思うんだけどなぁ」
「はぁー」
帝塚山は俯いたまま溜息を吐く。
「うん、頑張って描きたまえ。私はちょっと寄り道程度に来ただけだから。もう行くよ。良いか? 励むのだよ」
「先生、お忙しいところをお立ち寄りくださいましてありがとうございます」
「うん、うん、まぁ、とにかく、描きたまえ、励みたまえ、それじゃ、また」
「ありがとうございます」
「うん、それと、その珈琲の豆、置いて行くから、それじゃ、また来るから、作品の続き、楽しみにしてるよ、見せてくれるよね、きっとだよ」
そう言うと帝塚山を唯一認めてくださっている司馬良多郎先生は引き戸の激しく閉まる音を立てて出て行く。
「あ、うん、それとね、原稿料が入ると、この引き戸、直したほうが良いよ」
「ありがとうございます」
帝塚山先生は食卓の前で座ったまま礼を言う。
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