第30話 黒い煙
漫画を描こう 30
ハイウェイをまっすぐに走る。
交差点は無いが、軽いカーブがある。
前を走る単車は軽快に走っている。
テールランプが光らない。
多分、エンジンの回転数の調整だけで、山裾の一本道を右へ左へと体重移動しながら走っているのであろう。
さすがだな、と思う。
軽快なリズムを奏でる空冷エンジン、750ccとは思えない軽い車体。
なんと言っても、L型ツインバルブエンジン。
前で誘導してくれているドウカティ750cc ss 最高の単車である事は間違いない。
同じように、それを乗りこなすライダーも。
彼のヘルメットに装着されているヘッドセットマイクで呼びかけられる。
「おさむさん、聞こえてるかい? 参ったね。さっきの交差点、バイクが停まってたよ、あそこを右か左に曲らなけりゃいけなかったらしい。引き返すぜ」
その声とともに、2車線しかない道幅を、ヘア・ピン・カーブを曲がるレーサーのように見事にUターンして、ドウカティが装甲車とすれ違って行く。
曲がり角で待っている単車を見て、おさむは再び驚く。
トライアンフ デイトナ、イギリスが産んだ最高の単車だ。
「今の防音族は海外の名車の品評会か?」
とも思う。
デイトナのドライバーがヘルメットも脱がずに、付いて来いと手で指示してくる。
おさむは装甲車のヘッドライトで合図すると、デイトナがゆっくりと走り出す。
デイトナのライダーが、サイド・ミラーで装甲車がついて来ているのかどうかを確認したのであろう、単車が前輪を軽く上げて走るウイリー走行で、猛烈に加速し始めたのが分かる。
山裾の道、海が見えてくる。
そこに浮かんでいるのは軍艦である。
あの船はデストロイアーか?
そう思うと同時に奴らは海軍基地に逃げ込むつもりなのかと思う。
そして、その向こうで上がっている、黒い煙。
車1台が燃えているような煙の登り方ではない。
「しまった」
おさむが装甲車のギアを変えて、速度を猛烈に上げると同時に、前を走っていたデイトナも加速する。
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