第28話 サギャンの胸
漫画を描こう 28
装甲車に乗り込むとエンジンを掛ける。
爆煙を後にして基地を抜けようとするが、司令塔の前でジャガー・Eタイプ・リボーンが停まっている。
おかしい。
リボーンが停まっているとなると、今の運転手は二葉しかいない。
戦場近くに建てられた緊急処置棟から戻って来たのであろうか?
おさむは司令塔に入り、階段を駆け上がる。
既に救護班が働いているのであろう、ほとんど人が居ない。
時々怪我人に出くわすが、彼らは戦闘意欲を失っているらしく、おさむを見ても下を向いて衛生兵がやって来るのを待っているようだ。
おさむがデスパイアの居た部屋に入ると、一人の女が茫然自失の顔をして、空間を見ながら膝をついている。
「二葉?」
おさむが声をかけても虚な目は空間の一点を見つめているだけで、身動きひとつしない。
おさむは更に近寄り、もう一度声を掛けると肩に手を触れてみる。
「どうして戻って来たんだ?」
二葉は、おさむの顔も見ないで、
「無いの、何処を探しても無いの」
「何が無いんだ?」
「サギャンの、サギャンの胸が、無いの」
そう言うと二葉は顔を膝のなかに入れて泣き出した。
そんな二葉を見ながら、おさむは困った顔をして、少しづつ離れて行く。
「必ず、ここに居るんだぞ。俺はデスパイアを追いかける。奴を倒したら、必ず戻ってくる。約束する。ここから離れるな。奴らは既に投降している」
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