第27話 追跡始まる

漫画を描こう 27


 おさむは戦車部隊の後方で前進する兵士の一人に声を掛ける、


「デスパイアは逃亡した。ここには居ない、戦闘を中止して奴らに投降を呼びかけろ」


「お前は誰だ?」


 兵士は黒の革ジャンにブルージーンズの男を見て忙しげに詰問する。


「俺は、トーマス・ウーマン、リーダー、コマンド・ネーム、おさむ、だ」


「伝説の戦士が何故ここに居る?」


 兵士は持っていたライフルの銃口をおさむに向ける。

おさむは両手を上げてから、片手をゆっくりと皮のジャケットのファスナーに掛けて、ゆっくりと革ジャンを脱ぎ捨て、武器を持っていないことを示す。

そして、アンダーシャツの袖を捲り上げて左肩のタトゥーを見せる。


「これは?」


 黄金の甲虫が光っている。


「オサムシ、だ。伝説の彫り師、エドガー・アラン・ピーに彫らせたものだ」


 それを見た兵士が大声で叫ぶ、


「通信班ここへ。おさむが敵へ投降を呼びかけろと言っている」


 通信班がやって来て、兵士との会話が終わるとおさむに敬礼をしてから通信回線を開く。


 先頭を走っていた戦車のキャタピラが逆回転したかと思うと、おさむの近くで停止し、中から一人の兵士が出てくる。

おそらくこの部隊の隊長を務めている兵士であろう。


「リーダー・おさむ。お会いできて光栄です。私はこの部隊の責任者、ドスト・F・スキー、です」


 おさむも敬礼をしてから


「敬語はお互いに無用にしたい。聞いていただいた通りデスパイアはここには居ない。投降を呼び掛けてほしい」


「こちらも、もうすぐ呼びかけようとしていたんだよ。更に戦闘機2機、ガンシップが5機、もうすぐに到着予定だからね」


「よくもまぁ、それだけの数が一度に揃うものだ」


「スクランブルですよ、緊急用に戦闘機や戦闘ヘリ、戦車に装甲車がいつでも発進できるように山の中、街中のビルの地下、何処にでも隠してある。但し、暗証番号がなければ動かせない兵器がある基地の数に比べれば半分以下だけれどもね」


 おさむは両手を広げる。

そして、部隊の責任者は続ける、


「くるみ割り作戦の途中だと思うが? 何か手を貸すことがあるかい?」


「胡桃を割るのは君たちだ。それよりも手伝ってくれるのなら装甲車を1台貸して欲しい」


「運転は?」


「大丈夫だ」


「それなら機銃係は?」


「それも要らない」


「誰か信用のできる兵士でも?」


「いや、一人だ」


 部隊の責任者は不思議そうな顔をしたが、


「聞いたか通信班、装甲車を今すぐに用意させろ、機銃掃射砲は自動照準だ」


 通信士が連絡をとっている間におさむが責任者に尋ねる、


「ところで、その装甲車はジェットエンジンを積んでいるかい?」


「そんな高価な代物を私たちは持っていないよ。暗証番号さえ分かっていれば基地から盗みだせるけどね。それがどうかしたのかい?」


「いや、なんでもない」


 眩しい日の光を浴びながら、一台の小型装甲車がやって来た。

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