第21話 胡桃割り人形

漫画を描こう 21


 少し建物が揺れた様な気がした。

夢現に目覚めたおさむであったが、急いで跳ね上がり、辺りを伺う。

暗闇の中、二葉が何処に居るのか分からない。


 今、何が起きようとしているのかを、落ち着いて考えようとすれば、頬に痛みを感じる。

触ってみると溝みたいな穴が直線状に続いている。

多分、暫く階段のステップの角に顔をつけて眠っていたせいであろう。


「おさむ、起きたわね。始まったわ」


「くるみ割り人形、作戦か?」


「多分、手持ちの兵器、と言っても少ないけど、兵器を操れる兵士が少ない向こうも同じ事。この騒ぎに乗じて奴の部屋へ行くわよ」


「デスパイア」


 その時、地下室にも聞こえるくらいの爆発音がする。


「行くわよ」


 二葉が勢いよく1階への扉を開くと、そこには看守兵は居ない。

戦闘に駆り出されているのだろう。


 ゆっくりと進む。


 兵士たちは外へと向かっている者ばかりで、基地の内部は手薄になっているようだ。


 デスパイアの部屋にたどり着くまでに何度か戦闘はあったが、その度にミニスカートの双葉の太腿が顕になるような前蹴りや回し蹴りが炸裂する。

おさむは見ているだけである。

なので、その度に、


「おさむ、何をしているの? 行くわよ!」


 と二葉に声を掛けられる。


 そうやってデスパイアの部屋の前まで来たところ、あろうことか近衛兵さえ居ない。

二人はドアの両側に立ち兵士達から奪った小銃を構える。


「二葉、援護してくれ。俺が先に入る」


「気をつけて」


 おさむが軽く頷くと、またもや二葉の前蹴りがドアに炸裂する。

間髪入れずにおさむが飛び込み、回転して座った体制で小銃を構えるが双方どちらからも銃声がしない。


 デスパイアは一人きりで戦況を聞きながら指示を出していた。


 そして二人を認めると、


「やぁ、お二人さん。どうやって独房を抜け出せたのかな?」


 と一言った。

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