第19話 ノック

漫画を描こう 19


 親衛隊がやって来ると、ドン・デスパイアが命令する。


「二人を地下牢に入れろ」


「牢は?」


「独房だ、たとえ屑でも人質くらいにはなってくれるだろう」


 二葉とおさむは地下に連れて行かれ、別々の独房に放り込まれる。

独房の中は明かりとりのためだろうか3メートルくらい上に十字型の鉄格子が嵌められている。

但し、わずか数センチ。

と言うことは、ここは地下一階くらいなのだろうか?

隅に置いてあるバケツは、ここで用を足せ、と言うことなのであろう。

廊下側には縦横10センチくらいの小窓がある。

その窓は捕虜にくれてやる食事用の命を繋ぐ小窓なのだろうか?

もしも食事をくれるのならばだが。

それとも解放を知らせてくれる最後の望みの窓なのだろうか?

馬鹿な。

おさむは心配になり、急に二葉の名前を呼ぶ、


「二葉、二葉、聞こえているか? 二葉、二葉」


 何の返答も無く、声を出さなければ静寂だけが広がる。


 静かな時間だ。


 時の流れは日が暮れ出すと分からない。


 浅い眠りから目が覚めると暗闇だけの世界、ここが一体どこなのかを忘れてしまって混乱する。


 闇の中で四つん這いに動けば壁にぶつかり、何も出来ずに朝を待つしかない。


 また、心配になり、たった一人の知り合いの名を呼ぶ、


「二葉、二葉、大丈夫か?」


 相変わらずの静かな世界だ。


 その時、向こうの方から壁を、コツコツ、と叩く小さな音が聞こえる。


「二葉? 二葉なのか」


 そう言ってみるが全く返答がない。


 聞き間違いかと思って、もう一度耳を澄ますと、確かに壁を叩く音がする。

おかしなことに、その音が近づいているように思える。

一瞬、二葉か? と思うが同じように独房に入れられている二葉が廊下へ出れる訳が無い。


 然し、確かにコツコツという音がする。

そして近づいて来ているように思える。


 おさむは急いで手探りで壁を触って動き、扉を見つけようとする。

見つけた壁に耳を当ててみると、音はより鮮明になり、近づいて来ているのが分かる。


 誰だ? いや、人なのか? 一体何の音だ?


 やがて、音はおさむの近くまで来ると、おさむが耳を当てているドアをさっきまでと同じように2回叩く音がした。

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