第18話 二つの道
漫画を描こう 18
二人が連行されて入った部屋は大きく、その大きさに似合う大きな机の向こうで一人の男が両手を組んで、薄ら笑いを浮かべながら、こちらを見ている。
「ようこそ、樋口二葉、そして実質的指導者コマンドネーム、おさむ」
その呼ばれ方を聞いて二葉がおさむを睨むように見る。
「できればキャプテンのフランソワーズ・サギャンとおさむの二人で来ていただきたかったんだがね」
「ドン・デスパイア、どうして私たちをここまで通した」
おさむが言う。
「サギャンの右腕と左腕、と呼ばれている君達に会いたくてね」
二葉は黙って床を睨んでいたが、
「さて、トーマス・ウーマンの参謀と呼ばれている二葉君。君に聞きたいことがある。どうして私たちの邪魔をするのかな?」
二葉は俯いていた顔を上げて、今度は床ではなくデスパイアを睨みつけ血の混じったありったけの唾をデスパイアに向かって飛ばした。
しかし、十分に距離をとっていたデスパイアには届かない。
「なるほど。答えたくない。ふふふ、それも良かろう」
今度はおさむの方を向き、デスパイアが声を出す、
「君たち二人を基地の中に入れたのは他でもない。少し交渉をさせていただこうと思ってね」
「交渉内容を聞こう」
「さすがおさむ君だ、お隣の跳ねっ返りお嬢さんとは違う紳士のようだね」
「紳士かどうかは分からないが」
その会話を聞きながら二葉はおさむを睨みつけている。
「平和的解決だよ。手を組まないか? 私たちには政治力があるが軍事力に欠けているところがある。反対に君達には軍事力があるが政治力がない」
「クーデターを起こせば我々に理があることを認めるのか?」
「そうじゃない。君達にあるのは緊急事態対応型兵器とそれを動かせる兵士達だ。しかし、基地にある先鋭の兵器を動かすには暗証番号が必要だ。その暗証番号を知るのは参謀のみ。その参謀達が私たちの所にいる。お互いに宝の持ち腐り、ではないのかね」
「言われてみればそうだ」
「さすがだ、話が早い」
二葉の目が更に鋭くなり、またもや、おさむを睨みつける。
「但し、それだけで話を進める訳にはいかない」
おさむが言う。
「聞こう」
「理念が違う。君たちは政治力と軍事力でこの国の民を押さえつけようとしている」
「押さえつけているのではない。この国を収めていた支配者が姿を消した時、この国は乱れ、混沌が支配を始めた。そう、政治は乱れ、経済は貧乏人を増やし、人々は助けてくれる者などいない世界で救いを求めた。そんな世界を救うにはどうすれば良いのかと私は悩んだ。何もかもが腐り切った世界だ。世界を救うには誰かが支配者にならなければならない。そして私は征服者と言われながらもこの改革を進めて来たんだ」
「それを独裁政権と呼ぶんだ」
「では聞こう、君の理念とは何なんだ?」
「俺は、人が幸せになれば自分も幸せになれる、そう思って生きて来ただけだ」
「現実を知らない戯言だ」
「どうかな? それでも人々は身の回りの人同士で一日一日を助け合って生きてきた」
「それでは世界は、変わらない」
「君たちのやっていることで世界を変えれると思っているのか?」
「どうも話が合いそうにないらしい」
「手を組んだとしても、やがてまた、二つの方向に分かれるだけだ」
「交渉決裂、のようだ」
最後にデスパイアが言うと、呼び鈴を鳴らし、彼の親衛隊を呼んだ。
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