第14話 ガンシップ

漫画を描こう 14


 銀色に光る車が斜面を滑降するように走る。


「一安心てところか」


 おさむがため息をついて言う。


「さぁ、どうかしら」


 二葉が答える。


「おいおい。脅すなよ、戦いは戦場だけにして欲しいもんだ」


「しょうがないじゃない、もう始まってるんだもの」


「先ずは、一安心だ、って言っただけのことさ」


「二安心は出来ないってこと?」


「誰もそんなことは言ってないさ」


「でも、出来そうもないもの」


 そう言った二葉を見ると、ドライバーズシート側のウインドが下がる。


「外の音を聞いてみて?」


 双葉に促されておさむが耳を澄ます。

自分達の乗っている車のエンジンとは全く違う音が聞こえる。

そして、風を切る音も。


「この音は?」


「ガンシップ」


「戦闘用ヘリか?」


「しかも結構な大きさね。重機関砲、それにミサイルを数十本くらいは備えているわね」


「ここまでか」


「おさむ、何処か空き地があればそこでスピードを落とすわ。飛び降りて」


「何を言っているんだ」


「それとも私と心中を選ぶの?」


 その時、大きな爆発音が聞こえたかと思うと通り過ぎた道の崖が炎と共に崩れ去る。


「おさむ、飛び降りる用意をして」


「心中を選ぶと言えば?」


 機銃掃射が銀色のマシーンを追いかけては通り過ぎて行った。

ガンシップは空中で方向を変え真っ直ぐにリボーンに向かって飛んでくる。

またもや機銃掃射が始まる。

そしてその時、車は運よく直線の道に出る


「シートベルトを外して」


「お前を一人にはさせないさ」


「馬鹿、早くしなさい」


 おさむは静かにシートベルトを外すと、ドアとは全く逆のドライバーズシートに体を寄せる。


「言っただろ、一人にはさせない」


 そう言いながら二葉の頬に自分の唇を合わせようとする。

そして二葉は、それに合わせようとするように片手ハンドルで助手席側に寄り、おさむの肩に腕を回そうとする。

その時、俊敏な動きでドアを開け、おさむを蹴り飛ばすようにしながら反対方向へハンドルを切る。

おさむが放り出されるような形になった時、二発めのミサイルが発射されたが、二葉の見事なハンドル捌きで何とか逃れられたものの次は無い。

三発めからミサイルを連射されればどうにもならない。


 二葉は覚悟を決めて、深呼吸を一回すると、


「おさむ、貴方は生きて、この世界を救って欲しい」


 そう言うと力の限りでアクセルを踏んだ。

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