第13話 車重

漫画を描こう 13


 おさむがリボーンの屋根の上に上半身を出し、追ってくる装甲車に狙いをつける。

そこへ、装甲車の銃砲が火を噴いた。

危険を察知した二葉が急ハンドルを切る。

堪らずおさむが車から放り出されそうになるが、タンデム弾を装着したライフルを何とか離さずにいた。

車の後ろでアスファルトに着弾した炎が上がる。


「駄目だ、二葉。こんな状態で狙いなど定められない」


「もう良いの」


 二葉が叫ぶように言う。


「どう言うことだ」


「早く戻って、シートに座って」


 おさむがスルスルと屋根から抜け落ちるようにしてバケットシートに座ると、


「しっかりとシートベルトを閉めてね」


「装甲車は良いのかい?」


「前を見て、道路が見えなくなってるわ」


「下り坂に出たようだな」


「あとは私に任せて」


「何が起きようって言うんだい」


「任せて」


 下り坂に差し掛かったとなると、一度、ジャガー・Eタイプ・リボーンは姿を消すであろう。

装甲車は狙いが定まらず銃砲が火を吹くことは無くなる。

しかし、坂を降り出し、リボーンが姿を見せれば再び狙いを定めてくるだろう。


 リボーンが猛スピードで坂を越えると、着地した勢いで再び車体底面で火花が散る。

それを追いかけて装甲車が坂を越えるが大きくジャンプすることはない。

その車体の重さで、跳ね上がるような小さなジャンプだ。


「さすが装甲車ね、あのスピードでも坂をジャンプすることがない」


 二葉の言葉におさむが笑わずに言う、


「それがどうした? 追いつかれるのは時間の問題だ。しかも奴らの銃砲は本気で俺たちを狙っているんだぜ? 脅しなんかじゃない」


「そんなことわかっているわ。もう少しスピードを上げるわよ」


「おいおい、この下り坂でかい? しかも、さっきの道とは違って蛇のように曲がりくねり出してるんだぜ」


「そこよ。曲がりくねった道では奴ら狙いが定まらない」


「その代わり追いつかれて、後ろから追突、俺たちは谷底にご挨拶ってわけさ」


「そうかしら」


「おい、前を見てるか?」


「やっと来たわね」


「このスピードで、あのカーブ、どうするつもりだ?」


「どこでも良いから掴まって」


 その途端にリボーンがドリフトする。

ガードレールにぶつかりガードレールと車体の側面に火花が散る。

二葉が歯を食いしばりハンドルを切っているのが見える。


 そして、後ろで大きな音がする。


 次のカーブでも反対側にリボーンがドリフトする。


 三度目のドリフトで直線の道に出た時、二葉が車を止めて後ろを確認する。

その姿に釣られておさむも後ろを見ると、最初のカーブでガードレールが大破している。


「馬鹿め」


 二葉が呟く。


「奴ら、谷に落ちたのか?」


「どんなに優れた車両でも、重量が大きければ大きいほど、下りのカーブではスピードに押されて自分を支えきれずに滑り落ちるしかない」


「それで、この時を待っていたのか」


「行くわよ」


 車内で、再び二葉がハンドルを握った。

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