第8話 世界はひとつ、人々もひとつ。
部屋のドアを二葉がノックする。
中から、
「どうぞ」
と言う声がする。
二人が部屋の中へ入ると、思わず帝塚山先生の喉がゴクリと鳴る。
部屋の中の女性は見事なブロンド、透き通るようなブルー・アイズ。
そして、最高の笑顔で迎えてくれる。
帝塚山先生の理想の女性であることは言うまでもない。
「初めまして、おさむ。私のことは二葉から聞いていると思うけど?」
その言葉に二葉が答える、
「サギャン、それが少しおかしいの。熱の所為だと思うけど、今のおさむは話が頓珍漢なの」
「熱が・・・、そう、分かったわ。私の名前はフランソワーズ・サギャン。このアジトの新しい責任者。おさむよ、こんにちは」
「サギャンよ、こんにちは。ところで何処の国の人だい?」
「え?」
「国籍を聞いているんだ」
「国籍?」
「そうだ」
「二葉、やっぱり、おさむは貴女の言う通り、おかしいわね。この世界に国は一つしかない。どんなに容姿が違っていても、私達は同じ国の同じ人間同士だわ」
「ああ、そう、そうだった、そうだったな」
サギャンは、おさむのその言葉を聞いて、二葉を目で引き寄せ、二葉の耳に何かを囁くと、
「おさむ? 今まで何処で何をしていたの?」
と尋ねる。
「正義を探してた」
「え? それで? 見つかったの?」
「何処にも無かった」
「それで?」
「見つからなかったんだ。ただ、真実とは何かを知った。その代わりに記憶を無くしていた」
「そう、通りで・・・、貴方の状態が少し理解できたようだわ。それで、真実って?」
「誰も真実なんて見つけられないって言うことを知った。我々に有るのは目標だけだ。そこへ行く道は有るようで無い。我々が呼んでいる道の正体は、躊躇い、それだけだ。ならば、信じたものに向かって行動あるのみだ、サギャン」
「ありがとう、おさむ。やっと、人から聞いていた貴方らしさが見えてきたように思うわ。早速、本題の作戦に協力してもらうわよ? 良いわよね」
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