第7話 熱



 おさむと二葉は林道へと入り、目の前に出て来た大きな門へと向かう90度の道を見事にカーブし、中へと入って行く。


「おさむ、相変わらず見事なハンドリングね」


 二葉がヘルメットを脱ぎ、素晴らしいほどの長い黒髪を揺らせながら言った。


「ああ、RZのお陰さ。こいつのエンジンは最高でね。然も図体は小さいが故に加速が半端なく、伸びも最高だ。750キラーの異名を持つ理由さ」


 帝塚山先生は、単車のことなど何も知らない癖に、まるで出まかせのように、スラスラと真実を喋る。

二葉は、そんな帝塚山先生の話を切って、早口で語る、


「おさむ、ぐずぐずしてられないわ、早速中へ入りましょう。彼女が待っているわ」


「彼女? おお、彼女か、おう彼女に会わないとな」


「そうよ、彼女に会わないと。行くわよ」


「おお、彼女だな、彼女に会わないとな」


「おさむ? あなた? さっきから、って言うか私を助けに来てくれた時からおかしくない? 私が心の中で、あなたに助けを求めた時、急に現れて・・・、まぁ、良いわ、行きましょう」


「おお、そうだ、行きましょう、でわないか」


「やっぱり、あなた? おかしいわ」


「それよりも、すぐに中に入ろう」


「ええ、そうね、行きましょう」


 長い廊下を歩いている。


「ここは?」


 思わず帝塚山先生が尋ねてしまうと、


「私達のアジトよ? おさむ? あなた、本当に、間違いなく、絶対におかしいわ。熱でもあるんじゃない?」


 そう言いながら二葉が手を差し伸べて帝塚山先生の額に触れる。

その途端、帝塚山先生の顔が真っ赤に火照り出す。

何せ、帝塚山先生からすれば絶世の美人であるのだから。


「おさむ、凄い熱よ。休んだほうが良いわ」


「いや、大丈夫だ。とにかく彼女に会いに行こう」


「本当に大丈夫なの?」


 そう言いながら、二人は彼女の居る部屋へと歩いて行く。

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