第4話 ワイルドだろ?

漫画を描こう 4


 訳の分からない世界の何処かの廊下で帝塚山先生は立っていた。

と突然、声がする。


「おさむ、危ない、後ろよ」


 帝塚山先生は振り向いてみると、剣を持った二人の男が此方へゆっくりと歩いて来る。


「トーマス・ウーマンのチーフ、おさむ、とうとう見つけたぞ」


「何の?ことかな?」


「ふふふ、阿呆のふりをしても無駄だ」


 その時、また声がする


「おさむ、撃つのよ」


「何を撃つのでしょうか?」


「その腰にぶら下げているものは何なの?」


 帝塚山先生は腰に手をやると?

ガンベルト?

ということは俺はピストルという代物を持っている?


「早く撃って」


 帝塚山先生は思わず拳銃を抜き出し引き金を引いてしまった。

パン、パンと大きな音が二つする。


「うっ」


 撃たれた相手は胸が破れて倒れる。


「胸が、破れた?」


「奴が復活する前に、撃って撃って撃ちまくるのよ」


 声の主が廊下の扉から現れる。

美しい。

帝塚山先生の大好きな切長の目、風に靡くようなしなやかな長い髪。

全てが美しい。


「撃たれたところを、のり、でくっ付けて塞がれる前に」


「のり? くっ付く? 塞いだら復活? ゾンビ?」


 復活できるのならと帝塚山先生は拳銃を連射する。


「さぁ、逃げるわよ。こっちへ来て」


 美しい女性が、高いヒールの靴の踵を鳴らしながら走る。

凄い速さだ。

帝塚山先生は50歳を超えた中年で、スポーツなどしたことがない。

追いつける訳が無い、と思いながら走ると、なんと同じ速さで走れる。

そして長い髪を靡かせながら前を行く女性がT字路で体を45度に倒しながら、


「こっちへ」


 と素晴らしいカーブを見せる。


 この速さであのT字路へ突っ込めば、間違いなく壁に激突だ。

そう思うも帝塚山先生は綺麗にカーブする。


「この中へ入って」


 女性が扉を開けて招き入れた場所はトイレである。


「これで一安心だわ」


「トイレで?」


「ええ、ここは女性用トイレ。奴ら二人は男だったわよね。絶対に入れない」


 帝塚山先生が周りを見ると、扉ばかりで小便器が見当たらない。

と、そこに一人の男が見えた。

帝塚山先生は思わず拳銃を向けると相手も拳銃を構えた。


「おさむ? 鏡を見ながら何してるの?」


「え、鏡?」


 そう言われて拳銃を下ろしてみると相手も下す。

よく見るとかなりの男前。

顎に手を当ててみたりとポーズをとってみるが、果たして鏡の男も同じポーズをする。

思わず帝塚山先生はポーズを取りながら呟いてしまう、


「クール。ハンサムだ、カッコ良すぎる」


「おさむ? 何してるの? そこまで自分を褒める人は初めて見たわ」

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