第2話 白色のスカビオサ
重い…?何で?!あっ、忘れてた。
「起きろ、市」
「まだ寝るの…」
「起きるんだ。」プルルル、プルルル、
「市、市!何かがなっている。戦闘…いや、」
「分かった分かった、これは携帯!誰からだろ…?」そこには見知らぬ電話番号があった。
「はい、佐野です。」
「佐野様ですか?私───警察の者です。」
「えっ?!」何かしていないか不安になる。が、話は私の思いがけない方向に進んでいった。
「…分かりました。私が責任を持ちます。」ガチャッ、電話を切る。
「何だった?」
「…私の親戚のご両親が亡くなって、小学生の子を私が育てることになった…」二十四年間私は子供を育てたことも育てられた覚えもない。私に何ができるのだろう…でも、独りぼっちにはしたくなかった。会ったこともないけどきっと大丈夫…。
一週間後、私の家には一人子供がやってきた。
「お邪魔します。」賢い子だと思う。
「どうぞあがって、」
「これからお世話になります。」まさかではあったがその子は正一にお辞儀をした。
「あっ…嗚呼、宜しくな」
「と、取りあえず皆座って…」リビングへ行き、小さなテーブルを三人で囲む。
「自己紹介をしよ、まず、私からね」こういうのは勢いも大事な気がする。
「名前は佐野市です。二十四歳でコールセンターで働いてます。自分で言うのは何だけどあんまり使うものがなくてお金はある方だから、欲しいものあったら言ってね!さっ次は界くん。」
「はい、名前は山中界です。小学一年生で親が交通事故で亡くなったので来ました。よろしくお願いします。」静まる空気を感じる。
「ごほんっ!次は私だ。はじめまして界、私は木下正一だ。お前を驚かせるつもりはないが霊である。」
「あっ…」界はやってしまったと言うように驚いた。
「界くん、ごめんねびっくりした?」
「いや、大丈夫です。」
「界、お前他にも見えるのか?」
「…はい。」驚いた。正一が見えているということは私も界くんも霊を見る力があるのかもしれない。毎日が忙しくて気付けなかった。
「かっ、界くん!何かごめんね、こんな二人と過ごすのはいやかな?」
「いいえ、嬉しいです。お葬式の時、皆僕のことを笑っていました。あの子はあの人に送りましょって…だから、行き場があること自体が嬉しいです。」
「…」きっとそうだ。そうだけど、私には分からなかった。
「そうだな、界。私は戦争に行く軍隊の一人だったんだ。その時、お前のような人々が沢山いた。母親を待って泣いている者、泣くことも立つこともできない者、両親の死体を抱いている者もいた。」
「えっ…」界くんの目から恐怖の色が見える。
「すっ、ストップ!正一!小学一年生にはまだ早すぎるよ!」
「あっ…嗚呼すまない。」今日はとにかく関係を良好にしなくてはならない。
「界くん、欲しい物とか…したい事ある?」
「本が欲しいです。」正一も興味があるらしい、今日は本屋に行くことにしよう。
「分かった。じゃあ、色々終わったらショッピングモールに行こう、そこで本を探そ」界は嬉しそうだった。
スカビオサ 一都 時文 @mimatomati
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