第34話スイートアンブレラ

雨。

消えるように、気持ちが。

打ち続ける地面の、しみ込んでいく化粧水

大地が潤う、化粧をした土が、蟻の這う、まま、スイートアンブレラ

甘い汁を飲んで、ミルクの滴るボディ、コントロールから、飲み込む、瞬間の快楽に、酔いしれて、太陽がのぞく、まで、干上がった砂漠のように、キスで目覚める朝の声。

頬がつるりと、してくれば、突っ張る水に、嫌気がさした蟻さんの蟻塚に、うろうろ、女をナンパするボーイ。

傘を差して、天気予報は、晴れだったのに……

と言った、乙女の横でさっと傘を差す。

すると、ぷいっとそっぽを向く乙女の横顔に、投げキッスの視線を送る。

乙女は、ぽっと顔を赤らめて、はあっと息を吐いて、時計を気にする。

待ち合わせですか

ええ、そうですけど

ウソはいけませんよ

何をおっしゃるの

いえいえ、せめて、駅に行くんですね

ええ、

では、傘に入りませんか

……

沈黙の乙女は、渋々、傘に入る。

ボーイは、紳士的なステップで、スキップをするように、鼻歌を歌う。

変な人と言わんばかりに、後悔も束の間、一台の車が、通り過ぎる。

見送って、二つの視線が、同じ方を向いて、はっとしたボーイと乙女は、一瞬くすりと笑う。

さあ、お嬢様

何なの? それ

いえいえ、特に変ですか?

……

沈黙の乙女は、約束をすっぽかされたことを打ち明ける

そして、ダンスパーティに誘われるように、カフェに入って、ボーイの話に酔いしれる。

ナンパ師でもいいかしら

と不意に思って、首を左右に振るけど、恋のような香水が、ボーイから漂ってきて、素敵な人かも、と思うと、時計を気にしたボーイは、このまま、ダンスに行きませんか?

いいわよ。

と気取って返事を返す。

この人安パイにはならないタイプね

と言って、電話番号を渡した。

スイートアンブレラ、素敵な出会いをありがとう

ラブリーラブリー、ガールフレンド

そんなことがあって、今日も、街角では、恋が生まれる。

そんなことがあって、今日も、街角では、恋が生まれる。

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