第32話頬を寄せる

道に落ちたさいころを投げる手に、止まるようなモーションで、待っていて。

明日に、進む、ボートのヘリで、キャップを脱いだ、すると、君は、笑うようなスピードで僕に、こう言った。

頬を寄せてよ。

素敵な言葉に、寄り掛かりたい午後の航海に、出るまで、待ちきれない冒険心が、逸る腕を、振りほどく、でも、どこにも行かないで。

僕らの足跡に、ステップインしたダンスミュージック

愛なんていう言葉に、惑わされた、素直な君の眼が、さらわれる、どこまでも。どこまでも、いないなら、エンプティの鼻歌が、スルーするボールに、投げつけた壁、影になった僕の今日が、日向に咲くヒマワリを、恋焦がれる、種をまいた朝に、昼を待った雨が、夕方の収穫に、夜になって、変わることのない昨日を待つ、揺れる穂先に、ビブラートするトキメキが、小夜鳴き鳥の鳴き声を聞いている。

着替えた夜に、清らかな指が、スカートを叩いた、晩になって、恋人の夢に紛れ込む。

救い上げる指に、さらさらとしたシュガー、甘い記憶によってモスグリーンの窓辺に、映る気がしたショータイムの時、あなたを誘ったロードショー。

何度も息をついて、うつらうつらとするあなたのポップコーンが、飛んでくる弾けて、まるで、吐息のような音楽に、今宵の特別が、待ち焦がれる、別れる前に、キスまでの視線を、愛するロマンのただなかで、今、交差点にいる。

タクシーが通り過ぎて、独りではない。

手を振った君の、底知れぬディープブルー。

ほら、雨が降る。

と言って、つらい記憶に苦しむんだね。

と言った、僕の声に、聴こえないふりをして笑う、君はまるでプリンセス。

そう、独りきりのプリンセス。

頬を寄せるときに、しらけた顔をして、まだなのという君の、その声に、透き通るグリーンを感じたら、もう夜が明ける。

ナイトショーは終わって、閑散とした映画館に、掃除婦が来て、僕と君は出口まで寄り添う。

すると、一輪の赤いカーネーションを捧げた男女が横を通り過ぎる。

僕と君はそっと目を伏せて、夜に光る窓の向こうに、過ぎ去った日を見た。

それから、長いこと二人でいて、さようならの前に、キスをまたした。

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