第29話波並のエンジェル
恋しくて、何がって僕が訊くと、君は答えられない。
出会ったころのままでいてっていうから、悲しくなるよ。
羽の生えた天使みたく、そばに居てほしいなんて、きっとバカな言い訳
波が来たら、乗るだけ。
って、どこかのおっさんが言っていた。
大きな波に乗るんだ。
体が腐る前に
気持ちはうれしいけど、車が、海岸に止まったら、ドアを開けて出るんだ。
夢がある。
きっとうまくいくって、言い聞かせて、街を出て、忘れたいことだっていっぱいある
でも、おっさんが言っていたことも真実だね。
って言って、なんだかこの空を見てると泣けてくる。
独りきりじゃないって君は言うけど、でも、おかしくないか?
人間なんていう言葉をはじめに言うやつは、きっと頭の悪い証拠だよ。
僕たちの青春なんて、消えていくだけだけど、涙を何度も流せば、洗い流せるなんてものじゃない。
だから、海水を飲んで泳ぐ子供みたく、はにかんでいたい。
何て言うのは、子供じみてるかなって訊くと、君は、笑いもしないで、車のドアを閉めた。
風が少しだけ、冷たくなる季節に、出会った日を思い出す。
一瞬で過ぎ去るから、こうして車を走らせる。
また明日になったら、憂鬱になる。
波並のエンジェルが笑って
波並のエンジェルが笑って。
僕は、帰る準備をする。
体が腐る前に大きな波に乗るんだ。
そしたら、おっさんの言っていた意味だって、もう忘れられる。
出会ったころ、君が言っていた。
涙と波を言い間違えた。
素敵なことだ、マイエンジェル
今でも、波を見ると、君を思い出して、涙ぐむんだ。
なんだか今日は憂鬱だな。
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