第27話乗せて

うきうきと、浮かれた気分で、海岸を走れば、地平の先に見えるボートのときめくような波音。

そよぐ風に身を任せた乙女の指は、可憐な髪をかき上げて、さわさわとなる貝殻に込めたハートビートを、よろめく青春の足音に、踏み鳴らす砂浜、恋をしてるという。

僕は、独りで、途方に暮れる。

ビーチは静かで、秋の気配。

満ち足りた気持ちが、満潮の年頃に、髪に差した髪飾りに、貝殻の潮の音。

待ち人はこない。

気分は少しだけ寂しいけど、悪い気はしない。

シーズンを終わった海の家で、カゴメの恋の季節は過ぎた。

何処へ行ったの?

と誰かが聞けば、僕は何も言えない。

泣けてくるようなそんなバイブラフォン

ジャズの去ったビーチは、EDMとは違う、気持ちのいい静かな波音に、乗り遅れた少女の汽車の音。

遠くからしてくる

もう、去る時だと言って、砂浜の砂を蹴った。

ああ、夕暮れが近いけど、僕は寂しくない

ああ、夕暮れが近いけど、僕は寂しくない。

浮かれていたこのトキメキに

でも、青春が過ぎれば、トキメキが散るというなら、潮風のバイブラフォンに揺れていたい。

このまま永遠に

言葉を費やした夢の先に、またビーチに来て、朝霧の海にほどける気分が、グッドフィーリング

寒くなってきた。

温まりたいと思ったときに君はいない。

もう季節が変われば秋が来て、そろそろ、気持ちにしんみりとするなら、そんなものと言って、やはり音楽を聴く。

素敵な出会いはないけれど、素敵な気持ちに酔っている。

独りよがりのブルースが、ティーンの夢に、カモンアゲイン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る