ひとつ、屋根の下で
燦々お嬢様
第1話
「ふぁ~…」
あくびをしながら、アラームを止める。少し身体を伸ばし、ベッドから降り、キッチンへ向かう。そして、二人分の朝食を作る。それが私の朝のルーティンだ。
私…
きっかけとしては、親同士仲がよく、元々一人暮らしをしていた私のもとへ、親の仕事の都合で一人で過ごすことになったもみじ先輩が、親の紹介で家へ来たということだ。
私自身、全然嫌じゃないし、静かでつまらなかった空間が賑やかになったので、前と比べて楽しい生活を送れている。
一方、もみじ先輩は毎日笑顔で楽しそうに今日あった出来事とか、勉強とかを教えてくれる、とても可愛らしい良い先輩だ。
「もみじ先輩~?もう朝ごはんですよー?」
「んー、あと5分…」
もみじ先輩の部屋の方から眠たそうな声が聞こえてきた。いつものことで慣れたことだけど、しょうがないな、と思いながら、もみじ先輩の部屋へ向かう。
「もう、朝ごはん出来てますよー」
「んん…」
全く起き上がる気配がない…。まあ、いつもの事なんだけど。
「…!?ちょっ、寒いー!やだー!」
「…ご飯冷めます…。早く来てください。」
もみじ先輩が被っていた薄い掛け布団を容赦なくめくった。「寒い」と言っていたが、春中旬ぐらいの今にとっては多少、そう思っても無理は無い。だけど、流石に甘やかしてられない。少し怒ったような口調で言えば流石に諦めたのか、ベッドから降りてリビングへと向かってくれた。
「うわ~!今日は和食なんだね!すごい美味しそう!」
「そうですか、気に入ってもらえて嬉しいです。」
昨日はトーストだったので、和食にしてみたら意外と好評で嬉しく思う。二人で手を合わせて「いただきます」と言えば、もみじ先輩はすごい早さで食べていく。
二人とも食事を終え、各自、歯磨きや着替えなどを終わらせていく。
もみじ先輩は家事担当で、いつもゴミ出しや洗濯などをしてくれている。私はご飯担当で、朝ごはんを作ったり、早起きが苦手なもみじ先輩のお弁当も、自分のと一緒に作っている。夜ご飯は一緒に作ったり、たまに出前を取ったりしている。
「そろそろ学校行きましょうか」
「そうだね~!昨日みたいに遅れちゃう!」
「誰のせいだと…」
昨日はもみじ先輩が朝、起きなさすぎて、二人共々学校に送れてしまった。その反省として早く学校へ行こう、ということだ。
もみじ先輩は充電していたスマホを取り、スクールバッグを持って玄関へ向かって行く。私はその後を追うように玄関から出て、鍵を閉める。鍵を閉めたのを確認したら、もみじ先輩の隣へ行き、一緒に学校へ向かう。
「今日から一年生が体験入部だね~」
「あー、そうでしたね」
「葵衣ちゃんは後輩が出来るね!楽しみ?」
「まあ、楽しみですよ。」
「ちゃんと可愛がってあげてね!」
こんな無愛想な返事にももみじ先輩は、何事もないように話を続けてくれる。そんな、もみじ先輩とは居心地が良く、楽しい。
だけど、この楽しい生活もあと一年も無い。もみじ先輩は高校を卒業したあと、海外留学をするそうだ。海外から帰ってくるタイミングで親も帰って来るそうで、そこからは親と過ごす。
無駄な感情を抱かないように、『先輩』として接する。変な感情を抱いた分だけ、別れた時に悲しくなってしまうから。
あと一年を切った。
そして、私ともみじ先輩はひとつ、屋根の下で暮らす。決して、何も感情を抱いてしまわないように____
ひとつ、屋根の下で 燦々お嬢様 @sansan_0228
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