第3話 伏線回収は意外と早いらしい…
ふと、目覚めると外は月明かりの綺麗な夜だった。
(…神様の話では時間は進まない筈では?)
なんて考えてると
「おーい月宮くーん?パーティー始まるってさ」
と言う声と共にノック音が部屋に響き渡る。
…パーティーがまだ始まってなかった事に安堵しつつ、向かう為に扉へ進む。
(そういえば今、呼んでくれたのは女の子だったな
なんて良い子なんだろか…?わざわざ起こしに来てくれるとは…。何かお礼をしなくちゃな〜何が良いだろうか?……花なら要らなかったら捨てれるし、花にしよう。どんなに花が良いんだろうか…?取り敢えず、バラで良いか?)
そう思い『虚構』でバラを生成する。
赤色は不味い気がするので青色のバラにした。
理由?青色のバラなんて珍しいでしょ?
そうして扉を開ける。
そこに居たのは、茶髪ショートが月光に照らされ、儚げな印象を携えた美少女だった。
(やっぱり。うちのクラスの女の子の顔面レベルは高いな…)なんて不意に考えながらも
「ありがとう。お礼にコレどうぞ。」
嫌悪感を抱かせない為に丁寧に、そしてさっさと渡す。要らないならその辺りにでも捨てるだろ…
そうしてパーティーに向かう為に歩を進めたのだがふと、気がつく…
(会場への行き方分からん…)
それに気が付き、立ち往生していると後ろから
「月宮くん?ほら行くよ。大広間の方に案内してくれるメイドさん待っててくれてるから!」
どうやら茶髪っ子は面倒見の鬼らしい。
有り難く茶髪っ子の案内に従って進む。
その道中、彼女の胸ポケットには青バラが輝いていた。比喩ではなく…本当に光ってた…
(どうやら、バラは気に入ってくれたみたいだ…けど…どうしてただのバラのハズなのに光ってるんだ?)
それだけが分からなかったが、気がつくと大広間に着いていた。
「メイドさーん。お待たせしましたー!」
その声に反応して壁際で待機していたメイドさんが近づいてくる。
「お待ちしておりました。今でしたらまだ間に合うと思いますよ。ではご案内致します。」
そうやってメイドさんの案内に付いて行く。
途中の廊下には神聖王国という宗教色が強い国である為か、壁には所々宗教画の様なものが飾られていた。
天使が竜を倒している絵…人々が黒い渦から逃れようとしている絵…神様が降臨されている様な絵…
(本当にこの国において宗教は重要なのだろう…)
絵を鑑賞しながらもついに到着したらしく。
「それでは私はこれにて失礼致します。会場の方にて待機しておりますので何かあればお申し付けください。」そう言ってメイドさんは去って行く。
「良し、それじゃ行こっか!」
元気よく茶髪っ子が扉の先へと進んで行く…
俺は念の為、『警戒』と『気配遮断』、『消音』を発動させて会場に入る。決して遅れて来たことを隠す為ではないよ…
会場は正に豪華絢爛。輝かしい装飾たちに豪勢な料理はどうやら立食形式のようだ。
そして会場の奥は一段高くなっており、大量の兵士が並んでいる。明らかにワンランク上の人達用だ。
辺りを見るとクラスメイトの他にも貴族的な人達も多くいてクラスメイトの奴らと話している。
少しだけ目を奪われながらも、『気配遮断』を解除
前から居たかのように振る舞い、他の
そんな事を何回か繰り返してると、会場の奥にある扉から兵士が数人出てくる。
「国王陛下、王妃陛下がご入場されます!!」
そのうちの一人がそう高らかに宣言した。
(この国のトップのご登場だ…)
何か失礼があれば流石に不味いと思い、『気配遮断』と『消音』、更に自分に対して、『隠蔽』、『秘匿』を発動する。
(これで万が一があっても俺だとは気づくまい…。)そうして、奥の扉から筋骨隆々な男と清楚そうな女が出てくる。
話からして多分国王陛下、王妃陛下だろう…
周りの貴族っぽい人達も頭を下げているし。
(…念の為俺も下げとくか?)
そんな事を考えてると
「貴族諸君、面を上げよ。此度はこの会合に集ってくれたこと感謝する。そして、異世界より来られた客人達よ。我が国は君達を歓迎し、今後も支援することを約束しよう。」
国王様がそう言い、後ろの扉から台車と数人の人が入ってくる
「まずは明日、一人ひとりに金貨100枚を贈呈させていただく。」
良く見れば台車には大量の金貨が見える。
相場がどれくらいかは不明だがなかなか奮発してるのではないか?
「また、戦い方がわからない者も多いはず。故に王国の様々な精鋭を集めた。彼らからぜひ学んでもらいたい。では、軽く自己紹介をしてもらう。」
そうして後ろにいた数名が前に出てくる。
最初は爽やかそうな青年だ。
「初めまして。異世界より来られた皆様。私は近衛騎士序列第3位のユーリ・アタラクトといいます。私は主に近接戦闘を教えます。どうぞよろしく。」
そうしておじぎして下がっていく。
と同時に数名の女性から黄色い歓声が上がる
次は老紳士な男性だ。
「初めまして。私はコーゼン・レイゲンと申します。これからよろしくお願いします。私は主に魔法を用いた中、遠距離戦を教えさせていただきます。皆様には期待しております。」
そうして優しく微笑み下がっていく。
次に出てきたのは、やけに目が死んでる女性だ。
「どうも。ミリトア・サンテールです。主に道具の使い方を教えます。よろしく。」
そうさっと言って下がっていく。
次に来たのは、さっきとは真逆の活発な女性だ。
「初めまして!皆さん!私、ファーリ・テノンドって言います!よろしくね!あっ?!主に
元気よくおじぎして下がっていった。
「こほん…教官となる者の紹介はこれで終わりだ。これから、彼らも会合に参加するので、各々で交流を深めるように。私からはこれで終わりだ。各々自由にすると良い。」
そうして、先程紹介された教官たちが会場に降りてくる。
(俺はあまり関わることは無いが、俺の求めている事を教えてくれる人は…あの中には居ないが…)
そう考えながら、王妃様にバレないように目を向ける。するとアラート音とともに『虚構』のアイコンが点滅する。
(『虚構』が反応しているということはあの王妃様は幻術系の魔法かスキルを使っているということ。つまりは普段、諜報の人の可能性が高い。俺のスキル構成的に諜報活動は得意な方だろうし、奇襲までは神様から教えてもらってない…)
ただ、一つ問題がある…
(どうやって接触するかは考えないとな。)
そう、どうやって近づくかが問題だ。
今、ここで幻術を指摘するのは簡単だ。ただ、良くは思われないだろう。
「これにて私たちは戻るが後で娘達がくる予定だ。ぜひ、異世界から来た君たちも仲良くしてやってほしい。」
なるほど。王様の娘達…つまり王女様達がくるのか。もしかしたら、接触する機会を得られるか?
なんてどうしようかと考えてると、
「それと、この中に青い薔薇を持つ者に後で話したい事がある故、後で書斎に来てもらいたい。
これは個人的な頼みである為、無理に従う必要はないがよろしく頼む。」
そう国王様が皆に呼びかけている。
青い薔薇…?確か茶髪っ子に渡したのは青薔薇だった筈だが、何かあったのだろうか?
茶髪っ子を探してみるとメイドさんに連れられて、何処かに行くところだった。大丈夫だろうか…
目立ちたくないのでスキルフル稼働で隠れていたが茶髪っ子が戻ってきた。特に問題はなさそうだが渡した青薔薇はなくなっていた。恐らく気に入らなかったのだろう。それにしても先程から誰かを探しているようだ。聞き耳をたてると「ねぇ?ごめんだけど月宮くん見てない?」とクラスメイト達に聞いているのが聞こえる…探しているのは俺?
取り敢えず、スキルを解除して茶髪っ子に近づく。
「えーと…探しているのって俺?」と確認してみる。瞬間掴まれる腕。びっくりした…
「見つけたよ…ちょっと来て!」
そう言い、腕を引っ張り何処かへ連れて行かれる。
「あの…すいません。どこに行くかだけ教えてもらえます?」念の為確認してみると
「ん?王様のところよ!」
「えっ!?」
今、王様って言った?すいません王様。俺何かしましたでしょうか〜(泣)
そうして連れてこられたのは、執務室的な感じのお部屋だった。部屋には王様に王妃様(偽)、数名のメイドさんに鎧を着た糸目の男と大勢だ。
「お待たせしました王様。彼が件の月宮くんです。」やはり、俺は呼ばれる様な事をしでかしたようだ。
殺されはしないよな…?そう怯えていると
「おぉ!貴君が月宮殿か!呼び出して済まない。どうしても確認したい事があったのでな。どうした?早く席に着きたまえ。」
なんともハイテンションで王様が話しかけてくる。
良かった…殺されることはなさそうだ。
なんで王様に呼ばれたかは知らないが今は案内された席に座る。
「では、早速ではあるが本題に入らせてもらう。確認したいのだが、これは君から彼女…如月嬢に渡したのは本当だろうか?」
そう言って控えていたメイドさんが台座を机に置く上には茶髪っ子に渡した青薔薇が置いてあった。
…というか茶髪っ子、如月さんって言うのか覚えておこう。
「確かにこれはおr…私から彼女に渡した物です。それが何か問題でも…?」
何が問題かわからないので一旦確認してみる。
周りからは、「…やはり」とか「…どうなりますかね?」なんて声が聞こえる。ごめんね?この部屋の広さなら『聴覚強化』でどんな小声も聞こえるんだ…
王様も深く息を吐いて
「月宮殿にも説明するとこの月光に煌めく青薔薇は我が王家が探している聖遺物の一つなのだ。」と説明してくれた。
なるほどね。それならこの状況も納得だ。
これまでずっと探してたしてたものを何故か異世界から来たばかりの人間が身につけている…色々と話さなきゃいけないだろう。それにしても、聖遺物とは…ただの綺麗な花というだけだろうに。
「それで…私にどうしてほしいのでしょうか?」
ともかくまずは相手の要求を確認しなければ。
もしかしたら交渉の余地が生まれるかもしれない。
「なに、ただこの花を譲って貰いたいのだ。勿論無償とは言わない。そうだな…王家の名にかけて一つ願いをできるだけだが叶えよう。どうだろうこの条件で譲って貰えないだろうか?」と筋骨隆々の男がしおらしくなっていく様に笑いそうになるも『虚構』を貼り付けなんとか誤魔化す。
(それにしても、願いを一つ叶えてくれるのか…)
そう考えながら、目線を王妃様に向ける。
こちらをニコニコと見つめてくるが、相も変わらず『虚構』は反応している。
もしかしたら…いまならいけるのでは…?
「分かりました。そちらの条件でお譲りします。」
「おぉそうか!あr…」「ただし!」
「一つお願いがございます。そちらを呑んでいただけるのでたら。という条件付きでございます。」
断れないであろうタイミングで願いを伝える。
「内容にもよるが先程も言った通り願いはできるだけ叶える約束だ。して、その願いとは?」
良し!食いついた。これで勝ちだ。
「そちらの方に指導をお願いしたいのです。そう。王妃の姿をした誰かさんにね?」
そうして王妃様()に向かって礼をする。
そうすると先程まで黙っていた糸目の男がこちらに向いて
「悪いが説明を頼むよ。どうして見たこともない王妃様が偽物だと言い切れるんだい?」
と威圧感たっぷりで脅してくる。
茶髪っ子…もとい如月さんも「なにやってんの!?早く謝りなよ!?」と俺の方を揺らしてくる。
「わかったから揺らすのやめてくれ…では、説明しましょう。俺のスキルで幻術系は見破る事が出来るんですよ。」
そう言いながら『虚構』の幻術無効効果を発動させる。突如王妃様の方からガラスの割れる様な音が鳴り響き、姿がぶれて見えなくなる。
そうして次に見えたのは先程までの王妃様ではなく褐色肌の女性だった。
「ハッハッハッ!まさか、ネルバの幻術を見破っただけでなく破壊までするとはな!どうだ、ネルバ?彼は君に指導してもらいたいとのことだが?」
国王様のテンションがおかしくなっている…大丈夫だろうか?
「そうですね陛下…私の幻術を破壊して見せた。これだけでも十分ですが、この状況で私の幻術を指摘してきた胆力も評価に値します。私としては逆に指導させてもらいたいものです。」
ネルバと呼ばれた褐色肌の女性も笑いながらそう答えてくれる。高評価を頂けてる様で何よりだ。
周りのメイドや糸目の男が驚愕していると老齢の男性の声で
「失礼致します陛下。先程、お嬢様がたを会場までご案内しました。陛下も一度お戻りくださいませ。」と連絡を受ける。
「そうか。少ししたら戻る。先にお客人がたを案内してやってくれ。」
そう言われ、俺達は会場まで戻る事になった。
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