第1話 異世界でこそ未知への対策は大切である。
足元に硬い感触がある…着いたのだろうか?
「ようこそ皆様。お待ちしておりました。」
声が聞こえたので目を開け、辺りを見回す
目に映ったのはザ・異世界の教会関係者といった風貌の男女数十名の集団とお姫様的な女の子だった。
「始めに自己紹介をさせていただきます。
ノルメル神聖王国第二王女リィナ・メル・ノルメルと申します。」
どうやら、お姫様というのは間違いではなかったようだ。それにしても神聖王国か…。
後ろの宣教師的な集団もそれでか…?
そういえば自称神も「私の神官が迎えに来ます」と言ってた気がするし彼らがそうなのだろうか?
「いきなりで申し分ないのですが、皆様には一度私たちの城に来ていただきたいのです。」
少し困り顔を浮かべながら王女様は、提案でもするかのように聞いてきた。
「了解した。しかしその前に後ろの集団についても説明してもらいたい。」
流石、我らの委員長。相手の素性を察し、すかさず前に出て、了承と確認を同時にこなすとは…
疑問は何でも聞いていくその姿勢素晴らしいと思う
「了承していただきありがとうございます。彼らの説明は代表であるエルト大司教よりしてもらいましょう。」
王女様がそう言うと、なんだか派手な神官服を着たおっさんが前に出てくる。
「只今、王女様よりご紹介に与りました。王国で大司教を務めております。エルト・フィリウスと申します。以後お見知り置きを。」
成る程。大司教…実際に偉い人だったようだ
「我らは皆様をお呼びした女神様に仕える神官にてございます。我らに課されし使命…異世界からの来訪者に安心安全を約束し、共に悩みを解決する。この使命の下、皆様の手助けに参りました。」
以外とサービスが手厚いな…なんか少し怖いぞ…
その後も委員長は王女様や大司教さんと話し込んでいたが、俺は興味ないので背後にあったステンドグラスを眺めながら待っていた。
どうやら馬鹿共も余りの展開の速さに追いつけず、黙っていた様だ。ありがたい…学校でもそうしていろよ!
「それでは皆様、馬車をご用意しておりますのでこちらに着いてきてくださいね。」
どうやらお話し合いは終り移動していたようだ。
こっそりと最後尾につけ、皆についていく。
◇◆◇◆◇◆◇
そうして馬車に数分揺られ、城に到着。パーティーまでは自由時間とのことだ。
(みんな今頃、大広間で『スキル』について語ってんだろうなぁ…)
ちなみに俺は与えられた個人部屋にいる。
何故って?俺が得た『スキル』に問題があったからだ。
俺らが得たスキルは二種類。『ノーマルスキル』と『ユニークスキル』だ。
『ノーマルスキル』はこちらの人々得られるスキル戦闘系から生活の助けになるものと千差万別だ。
一方『ユニークスキル』は
過去にも同じようなスキルを持った転移者が居るかもしれないが、基本的には個人の魂に刻まれている素質に近いスキルが貰えるらしい。
俺のスキルは『ノーマル』は、
『気配遮断Lv.Ⅱ』『隠密Lv.Ⅱ』『聴覚強化Lv.Ⅱ』
『隠蔽Lv.Ⅱ』『消音Lv.Ⅰ』『索敵Lv.Ⅰ』『警戒Lv.Ⅰ』
スキルがやけに他人を意識しすぎな気もするが問題は無い。
ただ、『ユニーク』が問題だった…
『ユニーク』の内容が、
『狂気Lv.Ⅳ』『秘匿Lv.Ⅲ』『虚構』『夢想』
とかいう明らかにヤバイのだ。
先ず、最初に『狂気Lv.Ⅳ』。こんなの明らかに駄目なやつだ。俺って実は狂気を孕んでますと言っているようなものだ。見られたら終わる。
次に『秘匿Lv.Ⅲ』。これもアウト。こんなの秘密しかない人間しか取れなさそうなスキルです。本当にありがとうございました。(泣)
最後に『虚構』と『夢想』…
どう見てもイレギュラー感が否めないよ…
どうして、レベルがある筈のスキルにレベルが無いの?こんなの知られたら駄目じゃない?
他の奴らにどう説明しろと!?
今、追放系になるのは不味い…せめて一人でも仲間を作らなくては…
「と、とりあえず詳細は確認しないとな…」
急いでこの部屋に来たからスキルたちの詳細までは確認できていない…何が起きても良いように用意はしておかないと…
最初は『狂気Lv.Ⅳ』だな。一番ヤバそうだし…
『狂気Lv.Ⅳ』
【説明 常人とは異なる思考、他者の理解を得られない衝動、常識に囚われない言動など、周囲に理解されない存在が得るスキル。】
【効果 身体強化Lv.Ⅳ、高速再生Lv.Ⅳ、精神汚染(悦楽)Lv.Ⅳを自身に付与。周囲の意識があるものに対して恐怖Lv.Ⅳを付与。】
………ヤバくね?パッと見でもヤバそうです…
説明文的に非常識な奴に贈られるスキルっぽいが…
断言できる。そこまで俺は非常識な人間ではない。絶対何かの間違いだ!
効果の方も、身体強化と高速再生は文字通りなら、ありがたいが…精神汚染が怖すぎる。使い過ぎたら取り返しのつかないやつでは?しかも(悦楽)って笑いっぱなしって事?怖すぎです…
更に、周囲に恐怖を付与って何?しかも対象は[意識があるもの]って流石に広すぎないか?ゾンビ的な本能だけで動いてる以外には効くってことか?
気をつけないと仲間すら巻き込みそうだな…
とりあえず封印で…
次は……『秘匿Lv.Ⅲ』かな?明らかに他の二つは、何か違う気がするし…
『秘匿Lv.Ⅲ』
【説明 何かを隠し続ける、何か重大なものを秘密にし誰にも悟られなかった存在が得るスキル。】
【効果 自身のステータスの非公開設定を有効化
自身に対する同レベル未満の『鑑定』『看破』を 無効化。また、同レベル以上の『鑑定』『看破』をレベル分軽減。自身が隠したものに対して、
認識阻害Lv.Ⅲを付与。】
おぉ~!説明文が不穏だがこれは今の俺には当たりでは!?
『鑑定』『看破』とか言う明らかに、詳細が知られそうなスキル対策だし、何よりステータスの非公開化だ。急いで確認したが、どうやらステータスのレベルやHP、MP、更にはスキル群まで設定可能だった。
最高だ!ステータスを見せなきゃいけない場面でも、これを上手く使えば乗り切るぞ!
一旦、『秘匿』以外のユニークは非公開に設定しておこう。
次はどっちからいこうか…『虚構』か『夢想』…
う~~んどっちもヤバイのは確定…いっその事同時に、確認するか?良しそうしよう。
『虚構』
【説明 無より生まれ、、人を、国を、世界を騙し己すら偽ったモノ。その権能の一欠片】
【効果 世界に偽りを写し出し、偽りを認識する】
『夢想』
【説明 数多の願望より生まれ、存在を改変し、自らを変化させ続けたモノ。その権能の一欠片】
【効果 願いを具現化し、自身を改変する】
……理解が追いつきません。助けてください(泣)
説明も効果も、短すぎる…。
どう使えばいいかも判らないし、なにが起こるのかも不明…
いっその事、もう見ないふりして眠ろうかと思い、
備え付けのベットにダイブする。
(パーティーが始まったら誰か呼びに来るでしょ…
せめて、もう一度神様と話せたらな…)
そう、思いながらも俺は眠りに落ちるのだった…
◇◆◇◆◇◆◇
─―そうして何時間経っただろうか…。気づけば暖かくて柔らかいベットの感覚はなく、冷たく固い感覚で目が覚め、辺りを見渡すと忘れる筈もない、数時間前に見た《あの空間》に来ていた…。
(まさか本当に来れたのか…?)
多少の疑念は持ちつつ、これまた同じく見覚えのある扉を開ける。
そこにあったのは先程の広間ではなく、
大型のモニターに映る他のクラスメイトの姿。それをソファーに寝転がりながら半袖、短パンというラフな格好でドラマでも見ている様な雰囲気で見ている見覚えのある
……なにがあった?ひょっとしてこれは夢なのだろうか?少なくとも今の彼女には、多少あった威厳のいの字も無い。まだこちらには気付いてはいないが話しかけるべきだろうか…?
俺は少し悩んだが、もう一度話したかったのは事実だ。少し可哀想ではあるが話しかけよう。
「あの~。今、なにされてます?」
彼女を驚かせない様にゆっくりと話しかける。
気付いてこちらに振り向いた彼女と目線が合う。
その瞬間、あからさまに赤くなる顔。その瞳には、怒りと羞恥が見えていた。
わなわなと震えながらも俺を指差しながら
「……な、なんで…なんであんたが居るのよ!!!!!!!!!」
鼓膜が破れんばかりの声量で叫ぶ声がこだまする。
まるで変態を見るような目つきで見てくるので、すかさず弁明させていただく。
「まて、話を聞いてほしい。俺も気付いたら此処に居たんだ。来たくて来たわけじゃない!」
まぁ話したいとは思っていたが、嘘は言ってない。
それでも疑いの目のまま「じゃあどうやって来たのよ…」
なんて言われたもんだから、少し苛つき
「だから知らんわ!そもそもお前神様なんだろ?その格好はなんだよ!ニートみたいな格好でさぁ!」
なんて言い返せば、
「なんで来た本人が分からないのよ!この無能!
ていうか、神だって何時もあんな格好してるわけないでしょ!?あれ、結構着るの大変だし恥ずかしいんだから!!」
「知らね〜よ!お前の服装事情なんか!興味もない!つーか、そんな格好で怒られても怖くなんかないわ!このクソガキが!」
そんな言い争いは数分間にも続き、気づけばお互いの息は上がっていた。
「はぁ…、はぁ…、一旦…休憩だ…はぁ〜…」
「いいわ…賛成よ…少し…はしゃぎ…すぎたわ…」
そうしてまた数分後、ようやく息を整え終えた俺達は、事情確認の為、話し合うことにした。
こちらは気づいたらここにいた事、スキルについて質問がある事を話し、あちらからは驚いた理由とこの空間の特異性を教えてくれた。
なんでも、この空間は【存在はするが認識も干渉もされない空間】らしく…創るのに200年近く掛かったそうだ。そんな場所にいきなり送った筈の異世界人の俺が現れたから超びっくりした。と言うわけだそうだ。
「成る程。それであの驚きようだったわけか。」
「そうよ…この空間に私以外が居るなんて考えたこともなかったし…」
まぁ…こんな空間に入ってくる奴なんて居ないと普通は思うか…ていうか今…
「気付いたけどお前、口調違くね?なんかもう少し威厳あっただろ。最初とか…」
そう、
「ん?あぁ…そりぁね。あなたのスキル見たときにね…もう意味ない事、わかったし…」
まて?今、こいつは俺のスキルを見たと言ったか?
それで取り繕うのをやめた…ということは、俺のスキルを全て理解しているという事だ。
こいつは「あれちょっと疲れるのよね〜」なんておちゃらけてるが今の俺とっては最重要な情報だ。
「…なぁ一つだけ聞いても良いか?俺のスキルの詳細を理解してるのか?」
…俺は縋るように彼女に確認する。
そうして彼女はこちらを見ながらさも当たり前を答えるかの様に
「何言ってるのよ。私、これでも神なんですけど」
「まぁあなたにこれが宿るとは予測出来なかったけどね?」
なんて少し戯けながら答えてくれた。
「だったらお願いだ…俺にスキルの詳細を教えくれないか?頼む…」
今までの態度を悔いながらも頭を下げる。多分だがこれが確認する最後のチャンスだ…
そのチャンスを棒に振る訳にはいかない。
そう思い、頭を下げ続けてた時に不意に
「スキルの質問って、そういう事ね…」なんて聞こえて頭に柔らかい感触を感じ、驚いて顔を上げるとどうやら頭を撫でていたらしく。拠り所を失い、腕を伸ばしたままの
「えっと…ありがとうございます?」
つい、お礼を言ってしまったが、そんな俺を見て、彼女は笑いながら
「別に良いわよ。なんならもっと感謝しなさい。なんてたって神からの寵愛よ?えぇもっと感謝すべきね!」
なんて言って、ドヤ顔でない胸を張るもんだから
俺も可笑しくなってきて
「えぇ、ホントにありがとうございます。神様」
と、笑いながら返すと
「ちょっと何が可笑しいのかしら?」
今度はジト目で詰めてくる。
そんな事をしながら最初とは違い、笑い合いながら数分が経過した。
「ふぅ~。久しぶりにこんなに笑ったわ〜」
「えぇ。俺も久しぶりに笑いました。」
そんな話をしながらも彼女が姿勢を正すのを見て、俺もその場に正座する。
「とりあえず、あなたのスキル…特に『虚構』と『夢想』についていく話してあげるから、ちゃんと聞きなさいね。」
そう言いながら彼女の背面に画面が投影される。
そうして俺は、俺の手に入れたスキルの説明を受けた。
「いい?『虚構』と『夢想』はね。昔、私の世界に生まれた【亜神】の残滓なの…」
そう言いながら画面には【亜神】と書かれた丸い図形が砕け、その欠片にスキルと書かれた矢印が刺されている。それにしても…「亜神ですか…?」
「そう。亜神…つまりは神の座に至りかけた存在達その総称ね。今はほとんどの亜神は私に統合されたけどね。」
そうして画面には砕けた欠片のほとんどが【私】と書かれた
「でもね。それでも多少の残滓は残ってしまった
そうしてそれらは私の生み出した『スキル』というシステムに長い時間をかけて適応し、変化していた。それが【権能】と呼ばれるスキル群。
まぁスキルにならなかった残滓もあるけどね」
そうしてまた画面に変化が起こる。余った欠片たちが変形し、そこに『虚構』や『夢想』と書かれた図形が現れ、それらを囲む形で【権能】と書かれた円が現れる。
「まぁ幸いにもこれらのスキル群はね人には大きすぎて適合できなくてね。問題なく運営できてたのよね。」
画面には黒い
大きすぎて対象者が居なかった…故にこれまでも異世界人を受け入れても問題なかったのだろう。
ただ一つ疑問なのは
「なら、俺に宿った理由は…?」
俺は何故このスキルを得ることができたのだろうか?
「それなら説明は簡単よ。主な理由は二つ。」
「一つ目はあなたとの相性が良すぎた事。私の与えるスキルは貴方達の魂に刻まれた素質で決まる。そしてあなたの魂は、偶然にもこのスキルを受け取れるレベルで素質が刻まれていたことが理由。」
画面には『月宮』と書かれた火の玉が現れ、それに対して『虚構』と『夢想』から矢印が伸び、どちらもマルとなっていた。
「二つ目はあなたの許容量が異様に大きかった事
素質が有ろうともそれを収める器が小さければ入ることは無い。そのはずだった。けどもあなたの許容量は【権能】二つを入れてもまだ空きがある程大きかった。」
画面は変化し、『月宮』と書かれた円グラフが表示される。その三分の二程を権能二つが占め、残りに他のスキルが入る様子が映っていた。
「これがあなたが権能を二つも得た理由。」
そう言うと彼女は「分かった?」とでも言いたげに
顔を傾けながらこちらに向けてくる。
「あぁはい。なんとなく理解しました…」
困惑しながらもそう答えると、彼女は「…そう」とつまらなそうに画面を消し、こちらに向き直る
「まぁこれは完全にこちらのミスね…今からでも変える?まぁなんでもは無理だけど…」
肩を落としながら彼女はそう聞いてくる。
説明を聞いている中で自分の中で答えは決まってる
「いえ。変えなくて良いので代わりに使い方を教えてくれませんか?」
そう。せっかく手に入れてのだ使えるなら使いたい
そんな独善的な思考だがそうお願いしてみる。
「使い方〜?まぁ教えても使いこなせるかはあなた次第よ?それでも?」
成る程…まぁ【権能】なんていう位だ。簡単に使えるなんて最初から考えてない。
「それでもだ。せっかく手に入れたんだ使えないと勿体ないだろ?」
「それもそうね…今から【権能】の使い方を教えてあげるわ。精々頑張りなさい!」
そうして【権能】を扱う為の訓練が始まった。
時間が少し心配だったがなんでもこの空間では時間経過はしないから心配しなくても良いとのこと。
「いい?権能は他のスキルと違って、自分で考えて使うの。特にあなたの『虚構』と『夢想』は自分の想像が肝心なんだからね?それじゃあまずは初めに『虚構』からいくわよ。」
「これは簡単に言えば想像した通りに物の生み出す事が出来るわ。ただ一つ注意するとすれば結局は『虚構』…見た目だけ。それが自体が持つ本来の力とかは使えないから。剣をつくっても切れないみたいにね。分かった?」
「分かりました。それでどんな風に訓練するんですか?」
「それはね。手の中に一輪の花を想像して。花はなんでも良いわとりあえず想像しやすいので。」
「いい?確実にイメージするの。それが『虚構』の手っ取り早い覚え方なの。分かった?」
そう言われて目を閉じ手のひらを意識する。その中に花を意識する…とりあえずバラで良いか?
「まずは茎、次に葉、最後に花弁をイメージする。そんな風にやるとやりやすいわよ。」
アドバイスがきたのでその通りにイメージしていく
茎は深い緑色で棘は無し。葉は上の方に一つ。花弁はせっかくなので青色のバラをイメージする。
気づくと手の中に細長い物の感触が生まれる。目を開けるとそこにはイメージした通りの青色のバラがあった。
「へぇ~『虚構』の方は上手くいったわね。なかなか才能あるじゃない!ほら、どんどん行くわよ!次は『夢想』の方ね!」
成る程。これが『虚構』…世界に偽りを写し出す力
もっと早く出せる様になれば、色々と出来そうだ。
「それで『夢想』はどんな事が出来るんですか?」
「『夢想』はね。凄いわよ!なんと自身に対して自身のイメージを適応する事が出来るのよ!」
彼女は自信満々に説明してくれたが、自身に対して自身のイメージを適応…ふむ。意味が分からん。
そう頭を捻ってると見かねたのか
「分からないって顔してるわね。そうね…あなた何か剣舞でもなんでも良いわ。その通りに動く自分を想像しなさい。」
……剣舞か…柔道の型でも良いだろうか?
(確かにこんな感じに…)
必死に思い出しながらその通りに動く自分を想像する。
そうすると一寸の狂いもなく自分の体が勝手に動いていく。
「そうそうそんな感じよ。なかなか上手ね。」
そうして型が終わると共に体の主導権が返ってくる様に感覚が戻る。
「分かった?これが『夢想』よ。上手く使えばなかなか便利よ。」
確かに、どんな動きでもあんな寸分の狂いもなく動けるのは強みだ。ただもう一つ分かった事がある。
「……馬鹿みたいに頭が疲れる…」
そう『虚構』も『夢想』も常に頭を使い続ける。
この短い時間でもうくらくらするのは問題だ。
「まぁ…こればっかりは慣れだからね〜慣れるまで特訓だ〜!」
それから何時間経過したのかもわからない位、永遠と『虚構』と『夢想』を使い続けた。
限界が、来れば『秘匿』と『狂気』の説明を受け、色々と試して。また訓練。
彼女は疲れたのかソファーに寝転び、ポテチ(……この世界ポテチあるんだ…)を頬張りながら指示(…たまに攻撃魔法)を飛ばしてくる。
そんな事を繰り返す事何十回…
「良し!そこまで使いこなせば問題は無いわ!」
そう言いながらソファーから飛び降りこちらに向かってくる彼女。
「訓練に付き合っていただきありがとうございました。お陰でスキル達の使い方も把握しました。」
息を整えながらも彼女にお礼をする。
今では、『虚構』は1秒もあれば自分の姿なら作れるようになった。『夢想』も軽い運動するみたいに使えるようになっていた。他のスキルも『狂気』以外は問題なく使えるようになった。
「気にしないでよ。私もここで誰かとこんな風に喋る事があるなんて予想外だった。とても楽しかったわ。」そう言い合い、お互いに手を取り握手する。
「あなたの活躍楽しみにしている。なんてたって
「そんな目立つ事にはならない様にしたいものですがね…」
「それは難しい話かもよ。嫌でもあなたは巻き込まれるわ。
「随分と気乗りしない神託ですね…」
「あら?神託なんてそんなものよ?それとも代わりのものは何が良いの?」
「確かにそうかもしれませんね…では代わりに名前を伺っても?」
そう言ってみたが、彼女は少し寂しそうに
「流石にまだ私の真名は教えられないわ。どうせ、あなたまた来れるのでしょう?こんな今生の別れを演出してるけど…」
やはり、気付いていましたか…
「でも送別の品とか言って神託を渡して来た貴女には言われたくないですね~」
「ふふっ…ごめんなさい。でも神託は必要だったからね…仕方なくよ」
「はぁ…やはり気乗りはしないですね…」
「諦めが早いのも肝心よ。」
そうして巫山戯ながらも別れを告げる。
大丈夫。彼女とは何時でも会えるのだ。
「それではまたな。」「うん。待ってるよ」
そうして俺は目覚めるのだった。
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