異世界転生した俺は神様の弟子として世界を生きる 〜嘘と隠し事。偶に狂気と生きていく〜

玖島 二葉

プロローグ

 澄み切った夏の日の教室の中は授業前特有の喧騒に包まれている。

 なんでも例年稀に見る猛暑日らしい。

(道理でクソ暑い訳だ…)

 

することも特にない俺は顔を伏せ眠ろうと思っていたのだが、馬鹿みたいに騒ぐイキり陽キャ共にうんざりしてた。

(ったく…少しは静かにしてくれよ)

 暑さでいつもより苛つきながらも

 眠ろうと瞼を閉じる。

 それからしばらく経っただろうか?

 

不意にガラスが割れた様な音が響き渡り喧騒が止まった。とうとうあの馬鹿共がやらかしたかと思い、

顔を上げると、目眩と共に机に突っ伏してしまう。


(何が…どうなってる…?)

ぶつけたのかくらくらする頭を無理矢理動かし、周りを確認する

俺の目に映るのは同じように倒れ伏すクラスの奴ら

 数人は気絶でもしてるのか動きもしない

(全員動けないか…不味いな…)

 そんな助けを呼べない状況を理解した俺は

 それと同時に意識を手放したのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇


(背中が痛い…)

(こんな違和感で目覚めるなんて…最悪の寝起きだ…)

そんな最悪な気分と共に瞼を開ける。

「知らん場所だ…どこだ?」


最初に見えたのは、

魔法陣的な雰囲気を感じる天井だった。

ホントに『知らない天井』を目にする機会があるとは…

体を起こして、周りを見ると、

真っ暗な中に等間隔で浮く灯り、その先には扉も見えた。


明らかに夢としか思えない状況…

それでも、目覚める前の状況が気になっていた…

(明らかにあの状況は異常だ…それに目覚めたのが病院でないのはなのだろう。)(死後の世界か異世界か…どちらだ?)

死後の世界なら諦めがつく。

異世界ならそろそろ説明の一つでも欲しいものだ…


「周りは何も無いし…扉の先に向かうか?」

悩みながらも扉に近づき、念の為聞き耳をたてる。

(数人の話し声が聞こえるな…)


どうしようかと迷ったが今の自分には

武器も交渉材料もないならば当たって砕けろ!の

精神で扉を開ける。

そこにいたのは見覚えのある奴ら《クラスメイト》だった。

「ん?お〜月宮!お前も起きたのか」

「あれ?ホントだ月宮じゃん!おは〜」

 その集団の中でも俺に近かった二人が話しかけてくる。


「あっ…えっと…あ~うん俺も今起きてさ…」

 ちなみに二人の名前は覚えてない。

「どしたの?元気なくない?」

 低身長ギャルが心配そうに覗き込んでくる。

 申し訳ない。名前がでてこないだけなんです。


「確かに少し顔色が悪いぞ。座ったらどうだ?」

 体育会系男子も心配そうに覗き込んでくる。

 違うんだ。名前がでてこないんだ。


「おーい!お前ら距離感近いよ!月宮死にかけ!」

「へっ?……うわ!マジだ!?ごーめん!」

「げっ!マジかよ!悪かった!ごめん!」


誰かは知らんが助かった…ありがとう…

一息ついて辺りを見渡すと、どうやら俺が最後だったらしい。疲れたので腰を降ろs…

「異世界より来られた皆様、どうもおはようございます。」


(今度はなんなんだ!!)

 苛立ちを込めながら辺りを見渡す。

 周りの奴らでわかりづらかったが見えた。

 さっきまでは居なかったはずの女の子が

 そこには居た。


全員が警戒する中、その人は口を開くと

「初めまして、神です。以後お見知り置きを」

 なんて満面の笑顔で言われた。

 綺麗な顔だ…じゃない!!

 今、自分のこと『神』とか言ったか?

 頭のオカシイ子かとも思ったがそうは見えない。

 理由はわからないがそうしか思えないのだ。


「皆様には、私の世界に来ていただくことになりました。ですので、軽い説明をしようかと思い…」

「ちょっと待ってください!「私の世界に来ていただく」ってどういう意味ですか!?私たちはどうなったんですか!?」


誰かクラスの女の子が質問している。

 あれは確か、学級委員の書記だったけ?

 とりあえず、書記子ちゃんが凄い勢いで、自称神に質問していってる…ちょっと怖いな…

「落ち着いてください。そちらも含めてご説明させていただきます。」お〜お!流石神。動揺はなし

「先ず、始めに皆様のあちらでの状況について説明いたします。」


そうして自称神から俺たちがどうなったかを教えられた。要約すると全員が行方不明扱いらしい。

 なんでも俺らの魂を肉体ごと回収し、肉体はあちらの世界に合わせて調整され、魂の方に『スキル』や『ステータス』を与えるとのこと

 

そりゃー跡形もなく消えているのだから行方不明にしかならないか…

規模がデカすぎて理解ができてるのか分からん…。

それが俺らが全員が心のなかで出した答えだった。


その後も『スキル』や『ステータス』についての基本的な説明や異世界の世界観の説明を受けた。

でも、俺らはまだ聞いていない。俺らがこうなった原因を…


「そういえばまだ、僕らが行く理由を聞いてないが?」

 おっと!流石は我らの委員長であり、学年一位の秀才くん。俺ら最大の問題は忘れていなかったらしい。更にそれを聞くだなんて!気概あるぅ!


「それは…なんと説明すれば良いのか…」

 おや?自称神様の覇気が消えていってる…

「う~~ん……そのですね。簡単に言わせていただきますと…バランス調整的な?話でして…」

 はい?バランス調整?何かの聞き間違いだろうか?  

「バランス調整?ですか?」「………はい」

 どうやら間違いではないらしい…

「詳しく、聞かせてくれるのでしょうね…?」

「……わかりました…」

 

凄い!最初の威風堂々感がまるでない!まるで今すぐにでも泣き出しそうなレベルだ…

 そうして、泣き出しそうな女の子自称神は説明しだした。

 

曰く、この世界は最初は平和な世界だったらしい。資源は、溢れんばかりにあり、娯楽も皆好きなように楽しめていた。病もなく人も寿命以外で死ぬことなんてめったにない…そんな世界だったらしい。

 

まぁ…そんな世界があったなら狙われるのも必然で当時、目をつけたのが悪神と呼ばれる存在で、全ての魔物生みの親だとかなんとか…

 そんな悪神はこの世界を手に入れる為、魔物をけしかけて来たと…


最初は問題なかった。溢れんばかりの資源はこちらが確保している。対して相手は攻める事しか出来ない。ただひたすら耐えれば勝てていた。


そんなある日、事件は起こった。

 人々が病に伏せるようになってきたのだ。

 理由は単純、魔物側が適応してきたのだ。

 生存能力は皆無、周囲に病や呪いを振りまき、数分後には自滅する『禍獣カース』を生み出した。


勿論、対抗策をたて対策し、今では、見られなくなったそうだが、それでも全滅させた訳では無い。

 そうこうしているうちに、溢れんばかりの資源は消え、世界の約3分の2が取られた状態で拮抗するようになってしまった。


「そのため、この状況を打破する為に貴方がたを呼んだのです。」

 成る程。要するに、人類の領土を取り返して来いと言うわけだ。

「でしたら、何故私たちなのでしょうか?そちらの世界には及ばないとは思いますが、私たちの世界にも軍人は居たはず。何故彼らではなく私たちだったのですか?」


おっ?書記子ちゃんが復活した。

「それは簡単です。そちらからこちらに渡る際の波長に合い、なおかつそれなりの魂の質量があったのが皆様だったからです。」


そう始まった説明は体感で滅茶苦茶長かった。

なんでも、波長が合わない人間は送った瞬間、発狂したり、自意識を保てないので使い物にならない。

 

次にある程度の魂の質量がなければ、送れたとしても、民間人と同じレベルの力しか手に入らない。

修行でもすればどうにかなるが何十年もかかるので期待は出来ない。

 

故に、送るために波長が合った人々の中から魂の質量が一定以上の人を選別していた。

 そんな時、俺らを見つけたらしい。そこに集まった数十人、全員が波長に合う適合者であり、魂の質量も申し分ない集団だったとのこと。


確かに、自称神から見ればまさに渡りに船。僥倖とも言えた。そういった経緯を経て俺らが呼ばれた。と、いうのが事の顛末らしい…


(つまりは丁度良い存在だったってことだな…)

「そういった理由でございます。あちらの世界での最高待遇をお約束いたします。どうかお許しを。」

自称神様にもようやく覇気が戻ってきた。

書記子ちゃんも納得はしてないが理解はしたらしい

「……ありがとうございます。」と頭を下げ、下がって行った。


「それでは皆様を私の世界に転移させます。ご安心ください皆様があちらの世界に転移した際、私の神官達に迎えに来るよう伝えてあります。しばらくはその者たちの言葉に従ってください。」


そう言いながら杖(いつ取り出したかは不明)を床に向けると魔法陣が出現する。

「それでは、皆様には期待しております。」


そう満面の笑顔で言われたのを最後に俺らの視界は白く塗りつぶされていった。

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