第3話 技能だって……

 僕たちはそれぞれ馬車の中で自分のジョブの詳細を調べたんだ。種族も含めてね。

 僕の穴痒師けつかゆし(結界師)というジョブで出来るのは穴痒けつかゆ(結界)法という技能。

 レベルが001の場合、穴痒法けつかゆほうは対象のお尻の表面に耐えられない痒さを十秒間付与するんだって。十秒ってかなり長いよね。レベルが上がればまた違う場所を痒く出来るらしいよ。

 で、種族名の【ソウヨウオウ】なんだけど、漢字で書くと【掻痒王】なんだって。掻痒って痒みの事だよね。僕って痒みの王様なんだ……


 結界法は千立方メートルの結界を亜空間に作り出してその中に物を入れられるそうだよ。レベルが上がれば他の結界も作れるようになるらしいんだ。


 その説明をしたら他の三人が金貨の入った革袋を僕に渡してきて入れておいて欲しいって頼まれたんだ。自分で持ってるより安全だからって。僕も納得したから自分の分も含めて作った結界の中には四つの革袋が入ってるよ。


 それと、ゴウキくんが試してくれって言うからゴウキくんに穴痒法を発動してみた。


「か、痒いーっ!! 無理だ! この痒さを耐えれる人なんて居ないっ!!」


 って言いながら女子の目の前なのにお尻をボリボリズボンの中に手を入れてかいてたよ。それも四つん這いでしっかり十秒間……

 それを見た女子たち二人は、私たちには絶対にかけないでねと念を押してきたよ。そんな事するはずないのにね。 


 僕の今の能力はこんな感じで続いてサイクさん。


 不細工加工はある意味で凶悪な加工だと分かったんだ。なにせありとあらゆる綺麗なモノを不細工に加工するんだって。それは人にも適用されるそうだ。とてもキレイな顔をしてる花川さんや玉城さんにいつか必ずかけてやるって息巻いてたからね。

 いや、サイクさんもその伊達メガネを外したらあの二人に負けてないぐらい美少女だよ。


 種族名に表れてるしね。【ゼツビ】って【絶美】らしいからね。


 そして、更に…… 反転があって不細工なモノにかけたらキレイになるらしいんだよ。それを聞いたサヤカさんがサイクさんに頭を下げて頼んだんだ。


「あの…… サイクちゃん…… 私、子供の頃からこのあざに悩まされてるの…… サイクちゃんの技能で消したり出来ないかな? 出来るならお願いします」


 サヤカさんの顔の左半面には大きな紫色の痣があるんだけど、僕たち(サイク、ゴウキ)はそんなのは気にならないと言ってサヤカさんと普通に接していたんだ。でも、やっぱり本人にしてみたら消したいよね。今も顔の左側は隠せるように前髪を伸ばしたままだからね。


「うん、サヤカちゃん。出来るか分からないけどやってみるね」


 サイクさんがサヤカさんに不細工加工をかけたら……


「なっ、無い! サヤカ、顔の痣が無くなってるよ!! 良かった、良かったなぁ…… うっ、うっ、」


 普段から落ち着いているゴウキくんが興奮して半泣きになってサヤカさんにそう言った。


「ホッ、ホントにっ!? ゴウくん、私の痣が消えてるのっ!?」


 まだ信じられないサヤカさんにサイクさんが手鏡を手渡した。その鏡に映る自分を見てサヤカさんも泣いてサイクさんに抱きついた。


「うわーんっ!! サイクちゃん、本当に、本当に有難うーっ! うわーん!!」


 上手くいって良かった。御者のおじさんが何事だって顔をしてチラッと僕たちを見たけど大事ないと分かってまた前を向いた。騒がしくてごめんなさい。


 それからサイクさんのもう一つの技能、無細孔ぶさいく加工はどんな細いあなでも無くし、またどんなに細いあなでも開けられるというものらしい。


「何の役に立つのか分からないね?」


 サイクさん本人がそう言ってるけど、きっと何かしらの役に立つ筈だよ。


 次にゴウキくんの技能だ。


 一つ目はもう本当に言葉通りの不妊法ふにんぽうらしいよ。精子内の子種だけ自分の体内に残して射精する方法で、人にも付与出来るんだって。いつか僕もサイクちゃんと…… ゲフンゲフン、サイクちゃんとサヤカちゃんの僕とゴウキくんを見る目が冷たいのは気の所為じゃないよね? だから僕は言葉に出してはこう言ったんだ。


「大人になるまで封印だね」


 僕の言葉にゴウキくんもちゃんと頷いて同意を示したよ。ゴウキくんも女子二人の冷たい視線に耐えられなかったんだね。


 ゴウキくんの種族名【ケショウノモノ】は【化性の者】って書くらしく、忍者を指して武家の人がよく言ってた言葉らしいんだ。まさしく今のゴウキくんの事だね。


 もう一つの技能である賦忍法ふにんぽうは天から与えられた忍法っていう意味で、今は火遁の術しか使えないらしいけど、レベルが上がるごとに使える術が増えて行くんだって。ゴウキくんは戦闘職なんだね。これなら何かあっても頼れるかな?

 ぼ、僕ももちろんサイクさんに危険が迫ればちゃんと守るつもりだよ。


 それからサヤカさんの腐女(扶助)魔法の【腐女】の方なんだけど……


「ふ、封印した方が良くないかな?」

 

 と僕が言ってしまうほどの恐ろしい魔法だと思ったんだ。けれども、サヤカさんもサイクさんも、ゴウキくんですら何で? って顔で僕を見る。

 き、気づいてないのかな?


「あのさ、腐らせるんだよね? 女子を?」


 と僕が言うと、サヤカさんが何を当たり前の事をという感じで


「そうだよ。男子をじゃないからアナシくんは大丈夫なんだよ?」


 って言うけど腐らせるんだよ!? それも女の子を!? 使っちゃダメな魔法だと思うんだけど……


 僕がそこまで思った時にサイクさんが気がついたように僕たちに言ったんだ。


「アナくん、勘違いしてる。腐女子っていうのはね……」


 そこで僕は今まで知らなかった事をサイクさんから教えて貰った。そうだったんだ! 腐女子ってそういう意味だったんだ!!


「でね、花川と玉城にね、いつかかけてみせるのっ!!」


 サヤカさんが意気込んでます…… うん、まあ僕とゴウキくんに影響は無さそうなので良しとします。


 それで扶助魔法の方はレベルが001だから防御膜を自分や人にかける事が出来るらしいんだ。ただし、


「えっとね…… スライムの体当たり2回で壊れちゃうらしいの……」


 っていうことらしい。レベルが上がればまた新しい扶助魔法が使えるようになったり、防御膜も強くなるらしいんだ。


「2回も防げるなら大丈夫だよ! 絶対に役に立つと俺は思う!」


 ゴウキくんはそう言ってサヤカさんを励ましてるよ。僕も同じ思いだ。


 そうそう、サヤカさんの種族名【マジョ】はそのまま【魔女】で、【馬女】でもあるんだって。【魔女】の方はなんとなく分かるけど、聞き慣れない【馬女】の方は何でも馬に特化してるけど、会話できたり仲間にしたり出来るそうだよ。

 何気にこれはチートだと思うんだ。


 僕たち四人は馬車の中でお互いの能力をよく知り、もしも戦闘になったならどういう風に動くかなんて事も話し合ったんだ。


 僕たちのこの世界での冒険はこうして始まったんだ!!






 作者より……


 続きを書くつもりはあるのですが、取り敢えずこの三話で完結です。冒頭部分で完結って…… 

 また機会を見て続きを書いていく予定ですので、よろしくお願いします。

  


 


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僕のジョブ、表に表示されるのが結界師じゃなくて穴痒師って…… しょうわな人 @Chou03

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