第16話 火力が正義
───ドロドロと、生力が抜け落ちるように巨体が溶けていく。
───ドクドクと、死に抗うように鼓動を高めて剣傷を修復していく。
ドクドクと、ドクドクと、ゆっくり時間を掛けて、形を元通りに治して、
いくら肉体を剃り落とされようとも、何度でも何度でも、鼓動を復活させ、ドロドロ、この世に執着を────
「───中級魔法:
アヤミチの必殺の剣戟を受けても尚、再生しようとする変異スライムを、紅く輝く炎が包み込んだ。
炎は変異スライム全体を飲み込み、その巨体を溶かしこんだ。瞬く間に変異スライムは生力を失い、水色の液体が地面に溶け込んだ。
アヤミチは、直前の溢れる輝きは何処へやら、その光景を目の当たりにし、口を大きく開いて呆けていた。
目の前に広がるファンタジー、そして何よりも、その光景を見せた人物が意外でならなかった。
「リリア!無事でよかった!」
ルルドロスは、素早く剣を鞘に仕舞い、目立つ髪色の人物──リリア・ガーネットに手を挙げて再会を喜ぶ。
「おう。アヤミチは、なんでこんなアホ面してんだ?」
「さ、さぁ....」
リリアがひと仕事終えた雰囲気でアヤミチの肩を軽く叩くが、アヤミチは真っ直ぐを見つめて固まったままである。
「お、おーい、アヤミチー....?」
「お、俺も」
「え?何か言った?」
ルルドロスは、固まったまま動かないアヤミチを本気で心配するが、アヤミチはそんなルルドロスの心配を他所に何やらボソボソと呟き始める。
そんなアヤミチに、ルルドロスはアヤミチのすぐ傍で耳を立ててアヤミチの言葉を聞き取ろうとする。
「俺もあんな魔法使いてぇよおおおお!!」
すると、アヤミチは急に大声で叫び出し、ルルドロスは肩を大きく跳ねさせて驚く。
「あっ、ごめんルル....」
「いや、いいんだ...いいんだよ」
ルルドロスは、耳に手を当てて読み取りにくい表情をしている。そんな様子を見て、リリアはご満悦そうに口元を緩め、再びアヤミチの肩を軽く叩く。
「見てな、アヤミチ 炎魔法の上澄みを見せてやる」
リリアがそう言うと、アヤミチは目を炎よりも輝かせ、裏声を戦場に轟かせた。
リリアは、両手を未だに地面に突き刺さっているクルシマラの方向へと向け、集中力を上げる。
その瞬間、辺りの空気感が一変した。
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