039 ~経緯~

「我々はもともとお互いに争いもなく、平和に暮らしてたんだ。」


一般BeはBe子の抱えられながらもおもむろに経緯を語り始めた。

迷いない語り口は、今までに反芻を重ねた結果だろう。それほど、想いが強い。


「それを変えたのは、確かに我々一般動詞兵に理由がある。」


「それじゃ……。」


一般Beは憤慨したように顔を上げ、そしてIをにらみつけた。


「違う! 宣戦布告したのは確かに我々だ。しかし、それには大義名分があるのだ!」


Be子が再び高らかに声を上げ、そして笑った。

一般Beを除いて、その場にいる全ての者がきっと同じことを思っている。

一体Be子はどちらの味方なんだろう。わからなかった。


「我々はいつも……、いつもBe将軍家の足元を見て生活するしかなった。」


一般Beが握る拳は次第に震え始めた。


「我々一般動詞兵は、一人ひとりの力で言えば確かにBe動詞将軍家の足元にも及ばない。」


その拳は一たび広げられると、その真下にある砂利をざっと握った。


「力は弱くとも、皆手を取り合って、協力して平和に暮らしていたんだ。なのに、なのに……。」


握られた砂利はこれほどまでに細かかっただろうか。

一般Beの手から放たれた砂利は、サラサラと待って風に吹かれていった。


「あいつが、あいつが仲間を踏みにじったから、いや違う! 存在そのものを否定したからだ! あのゴミを見る目……。忘れられるわけがない。」


HeやSheがピクリと反応した。

あいつと聞き、あのおぞましい存在を認知させられたからだ。


今まさに想像している存在がまさにその元凶であったことは、どことなく勘づいてはいた。

しかし認められなかった。HeとSheには少なからず、関係があったからだ。


「おい、そこの二人。」


HeとSheは再びその姿勢を正した。


「お前ら二人に、Is将軍を止められるのか?」


HeとSheはついにその足を震わせ、そして立っていられなくなった。


想像するだけでぞっとする。止められるはずがなかった。

Is将軍とは、Be動詞将軍家三大動詞の一人、荒ぶる武神と称されている。

相手が悪すぎる。


名前を出すだけでもためらうその存在を止めようなど、

無謀にもほどがあるとわかっていたからだ。


「ば、馬鹿なことを言うな! 誰があの、お、お方を止められるんだ!」

「そうだぜ、いくら一般動詞兵が無限に存在してようとも、相手が悪すぎる!」


「分かってる! 分かっているが、始めた争いは俺たちの手で終止符を打たねばならない。たとえどんな手を使ってもだ。」


その時、HeとSheの背後から声が上がった。

状況をわかっていないのか、呑気な声だった。


「なるほど! それで私たちを利用しようとしていたのか! なーんだ、すっきりしたよぉ。」


「あ、I様……?」


今日何度目かわからない。Be子がきょう一番の笑い声をあげた。


「おーほほほほほっ! やはり私の目に狂いはなかったわ! Iとやら、気に入ったわ!」


Iは笑顔でBe子に答え、そして一般Beの元に歩み寄った。

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