038 ~積年の諍い~

Iは皆が集まる最中、かつてHeやSheが言っていることを思い出していた。

Iがイズを口にした時のことだ。


HeやSheは取り乱し、そしてIがイズと言うことを阻止していた。

Iにはそれが異様だった。

イズが何なんだろう。

どうしてそんなにおびえているんだろう。


Iは思わず口にした。


「イズ……。」


今まで聞こえていた周辺の音が一瞬にして静まり返った。


「あっ。言っちゃったにゃ、っと。」


途端に一般Beは立ち上がり、そして咆哮した。

折角集まって来た皆がそのためにいったん距離を置いた。


「そいつだ!!! おのれぇ、おのれぇBe将軍家め……!」


一般Beは毛を逆立て、そして今にも誰かにとびかかろうとする様子だった。

一般Beの強さは皆が承知している。


一般動詞としてのBeは、“なる”を意味する。


怒りに身を任せて何にか、考えるだけでも恐ろしい。

どうにかこの場を収めなければならない。


頼りになるのはBe子だ。皆がBe子に目を向けた。


「あぁーん、あなた! それよ、それ! なんて勇ましいお姿なのでしょう!!!」


Be子は一般Beのもとに近づいていった。その時に音もなく近寄る様が恐ろしい。

いくらキャラの強い姫にしても血筋はBe将軍家。

その能力は目を見張るものがある。


なにより……。


パカーン!!!


少し前に耳にした音が周囲に響く。

どうやらそれは、Be子が持っている扇子で一般Beの首筋を打つ音だった。


「その勇ましいあなたは私だけのものよ!」


Be子は一般Beの動きを止めると、またしても自らの腹に抱え込んで地面に倒れ込もうとした。その一連の流れは誰にも止められないほど、迷いがない。


その時Youが遮らなかったら、結局同じことの繰り返しになっていただろう。


「び、Be子姫様! お、お待ちください! まだお話が……。」


Be子はその鋭い目つきをYouに向けた。

その殺意たるや一瞬に動きを止めてしまう。

唯一効果がないのはIだ。YouはIにも目配せした。


「び、Be子さん、私からもお願いします。」

「んー、仕方ないわね、Iが言うんじゃね。ほれ、立ちなさい。」


「あ、う、うん。」


一般Beは姿勢を正すと仕切り直すように咳払いをし、そして何事もなかったように話し始めた。


その内容は、いつかは触れられざるを得ない、

Be動詞将軍家と一般動詞兵による積年の諍いによるものだった。

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