036 ~Be と Be~
一般Beと言われた者は、
地面に突き立てた剣の柄をつかむと一気に振り上げた。
それでもなお不敵な笑みを浮かべている姿に、Youは背筋の凍る思いがした。
「危ねぇ!」
Heは持ち前の俊敏さを活かして跳ね飛び、そして一般Beの前に立ちはだかった。
その最中にIとYouを手加減なく突き飛ばしてしまったが、
それに応じている暇はない。
一般Beは、今にもその剣をHeめがけて振り下ろそうとしている。
「ほぉ、私のことを知っている者がいるのか。ならば話が早い。」
先程はあれほどまでにBe将軍家を恐れて、
そして自らを一般動詞兵とさげすんでいたのにもかかわらず、
その姿はもうどこにもない。
「だ、だましていたのね。」
辺りに風が吹き、落ち葉が舞う。
空にのぼっていく煙は風に吹かれ、
大地の震えとともに今にも雷が落ちてきそうであった。
Youはその圧倒的な存在感に一歩も動けないでいる。
IとItは一緒に肩を並べてすくみ上り、
Sheは度々聞こえてくる ドンドン という音に集中を遮られ、
対抗呪文を詠唱しきれないでいる。
そしてHeは、立ったまま気を失っているようだった。
「あの、馬鹿! いっつも口先だけのオオカミやろうだ!」
一般Beと呼ばれた者は両の手を真横に広げ、
今にも空に舞い上がるかのような神々しい姿をしている。
深みのある笑い声はIたちを嘲笑するように繰り返され、
そして足元から伝わる振動はますますその度合いを強める。
「フハハハハハハッ!」
ひとりでに動き出した剣はその切っ先をHeに向けて空中で静止した。
Youはその光景を見たくはなかった。しかし目が閉じない。
絶体絶命かに思われたその時、辺りがはたとその鳴りを沈めた。
一瞬の静寂のち、周辺に パカーン という乾いた音が響いた。
その音とともに一般Beと呼ばれた者の顔は、
点で描かれたようにひょうきんなものになってしまった。
そしてその全身は深い影に覆われている。
「あっ、あっ、なんだにゃ、あれは!?っと。」
皆が注目する先は一般Beの背後、
そこには一般Beよりはるかに大きな存在が立っていた。
一般Beは少しずつ後ろを振り向きつつ、
そしてついにその存在を目の当たりにした。一般Beの声がとどろく。
「び、び、びっ、Be子ちゃんっっ!!!!」
先ほどまでの威勢はどこに行ったのか、ひどく情けない声を上げている。
「なななな、なんで、なんでここにいるの!?」
「あなたーーーー!!!」
地響きに似た、
そして唸りとも取れる声ととものBe子と呼ばれた者は一般Beに抱き着いた。
その巨大な身体に押しつぶされ、
――さきほどまでの地鳴りは全てBe子の仕業――
地面に押しつぶされるとその姿は腹に隠れてしまった。
「い、一体、これは……。」
Iたちは、地面の上ではらばいになってゆらゆら遊んでいるBe子と呼ばれた者を、
しばらく見つめるしかできなかった。
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