035 ~敵か味方か~
「その矢は、Be将軍家のものだ。」
「び、Be将軍家……。」
Heはその言葉を聞いて、怒りより恐怖が先に来ているようだった。
信じようにも信じられない。それはSheも同じだった。
「な、何かの間違えじゃなくて? そもそもBe将軍家様がどうしてHeの命を狙うようなことをなさるのよ。」
「間違いなんかじゃねぇ! その印が見えねぇのか! それに何より……。」
この中で唯一話についてこられていない者がいた。Iだ。
Iはどういうわけか色々の事情を知らない。
知らないというより、忘れている感覚に近かった。
そのことをIは気に病んでいる。
しかし事情がわからないIにとってみれば、
やはり訊いてしまう以外に方法がなかったのだ。
「ねぇ、どういうこと? Beって何?」
一瞬、その者は身体をぴくっと動かした。
しかしいちいち話を戻してはいられない。SheたちはIを遮るしかなかった。
何よりBeと呼び捨てにすれば焦るのはいつだってHeだ。
「お、おい! 勝手に呼び捨てにするんじゃねぇ!」
HeはIの口を押え、そして話しの輪から遠ざけた。
たまには気が利くじゃないか、とSheは感心していた。Sheは安心して言葉を待つことができた。
「それに何より、我々一般動詞兵はそんな都合のいい武器なんか持っちゃいねぇんだよ。」
一般動詞兵と名乗ったその者は、腰の脇から短い剣を取り出すと、
勢いよくそれを地面に突き立てた。
「俺たち一般動詞兵は量産型だ。Be将軍家のように特別な武器は持っちゃいない。」
「へぇ、量産型。それで、一般動詞って何?」
いつの間にかHeの腕から抜け出していたIは、
再び話の中央に忍びこんで話を遮った。
これにはさすがの一般動詞兵もSheも、あきれ顔を隠せなかった。
「それではいったん話を整理しましょう。」
聞こえてきたのはYouの声だ。
「お、おい。もう大丈夫なのかよ。」
「はい、おかげ様で。話は少し前から聞かせていただいておりました。」
Youは言葉の通り大丈夫そうで、自分の足で確かに立っている。
するとYouは、立ち上がったなりでスタスタとIのところへ歩いて行った。
そしてIの手を取ると、一般動詞兵に問いかけた。
「いいですね、一般動……。いえいえ、“一般Be”さんとお呼びした方がよろしでしょうか?」
「えっ……。」
皆の視線が”Beさん”と呼ばれた者に集められた。
”Beさん”と呼ばれた者の口角が、少しずつ上がっていくのをIは見逃さなかった。
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