第三章

032 ~焼き印~

「誰だ! 待て!」


Sheの静止も空しく、黒い影は森の中に消えていった。

木々はいつの間にか生い茂り、あたかも影の存在を隠すようであった。


「ねぇ、矢に何か結んであるよ!」


Iに言われてHeは自ら矢を抜きとって、手紙をYouに手渡した。

そこにはこう書かれていた。



【余計な仕事を増やすな。今すぐ立ち去れ。】



「変な手紙ですね……。」


Youの怪訝そうな顔を見て、Iが尋ねた。


「変? おかしいの?」


Youは腕を組み、右手を顎に当て考えながらというようにゆっくりと口を開いた。


「えぇ。その、物騒なやり方と内容が釣り合っていないといいますか。」


すかさずフォローに入るはSheだ。


「それだ! ただの脅しならHeの頭は狙わない。しかも余計な仕事って……。」


皆が沈黙を重ねている時、一人、いや一体が辺りを嗅ぎまわっていた。

その様子はまるで隠密だ。


「ねぇ!っと。ちょっと来てみてにゃ!っと。」


Itの声がする方へ皆が走っていった。

森の奥に進んでいってなお木々に埋もれるかと思いきや、

Itが立ちすくんでいたのは遠くの崖を見上げられるような原っぱだった。


いや、驚くべきはそこではない。


息を切らし集まった皆の息が、はたと止まった。


そこには争った跡があった。

剣や矢、そして斧や盾など、

砲撃を受けたと思わる箇所からは煙が上がっていた。


「い、いったい、何が……。」


Iが恐るおそる歩を進めていると、その一つところに何やら動く気配がした。


「ねぇ! あそこ!」


声に応じて皆が走り、そして目の当たりにした。


そこには一人の人間がうつ伏せに倒れていた。

今にも息絶えそうに苦しむ様がある。


そして何よりも目が奪われる。


その者の背中には、大きく “Be” と焼き印されていた。

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