030 ~ひそかな企み~

Youの声は洞窟の奥深くにまで吸い込まれていく。

行き場を失った音は反響して最深部に到達した。


とある者が気づき、そして声を上げた。


「この声は、You。やはり来ていたのですね。」


歩き疲れたのかWhatはどかっとその辺に腰を下ろした。

そして唸るように答えた。


「あぁ、知り合いだったな、Howは。」


声の主はHowだった。

Youの声が聞こえたわけではない。しかし感じてはいた。


「えぇ、でもどうして知らせてくださらなかったのですか。」


Whatは再び喉の内側の壁をこするような声を出した。

だいぶIたちとのやり取りに身体が堪えていたのであった。


「今はその時ではないということだ。」


「その時……。」


Whatは胸元から?マークを一体取り出すと、それをHowに渡した。


「なかなかの者たちだった。特に、Iと言ったか。あれは強い子だ。」


Howは?マークを胸に抱き、そして伝わってくる振音の中にYouを探した。


「しかし、それだけではな。」


Whatは、一度は傾けた身体を再びお越し、ふんっと腕に力を入れた。

その殺気はいくら同じ疑問詞族と言えど、心地いいものではなかった。


Howは顔を上げた。

併せたように、その背後からぞろぞろと現れてくる者たちがいた。


疑問詞族の仲間だった。


「これから大きなことが起こる。」


皆が息を飲んだ。


「私たちも、支度をするとしようか。」


「はっ!!!」


一同の声は洞窟を逆に進んでいった。

洞窟の出口を抜けるとさらに木々を抜け、岩場にあたって上空へと登っていった。


いつか見たことがある。

世の中を覆うように空鳴りは響き、そして告げるべき者にそれは告げられた。


とてつもない大きな存在が、動き出そうとしている。


Iたちには、まだ知る由もなかった。

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