029 ~?マークの謎~
「スパイにゃ!? っと。」
YouはItの驚き方に微笑みつつ、説明を続けた。
「えぇ、スパイです。?マークは疑問の象徴。皆さんが疑問に思われていることは何でもお見通しですよ。」
お見通しと聞いて、Heは辺りをくまなく捜索し始めた。しかしIたちは洞窟の中だ。
何かがいる気配はない。
少し表に出ても木々が茂るばかりで、たとえその背後に隠れてもHeの素早さには逃げられないだろう。
つまり、なにもいないということだ。
そのことに気づかないSheはもはやHeに構わない。
勘のいいSheは途端に疑問をやめた。そこにスパイがいるとわかったからだ。
「いちいち確認する手間が省けるわね。ちょうどいいわ、もう先へ進みましょう。」
Heが周辺のかぎまわりから戻り、何もなかったと報告した。
何もいるはずがない。?マークはもっと身近にいるからだ。
そう、会話の中だ。
人が問えばその中にひっそりと存在しており、そして内通する。
世界中から集められる情報はそれだけで力だった。
それがこの疑問詞族が恐れられる理由の一つでもある。
Heはむき出しの闘志を消してはいない。
Itは自由に漂い、Sheは靴紐を結び直している。
Youは空を仰いでいた。
岩場に生えた苔は苔としている。岩は自然に身を任せて破片を落としている。
辺りにある木々は毎年のように栄え、そして朽ちる循環の中にいる。
それは土を見ればわかった。
ここに争いがあるわけがない。
Iは多くを知らない。しかし多くを感じることができる。
辺りを見渡し、そして安堵している。
「大丈夫だよ! What様に?マークさん、そんなに悪い人達じゃないよ!」
「お前、ずっと寝てたのか? さんざんあぶねぇ目にあったろうが!」
「ちょっとHe君! あんまり疑問文使わないでよね! そのマークがあるんだから。」
「だから、大丈夫だって! そうだよね、Youさん?」
Youの目は涙を浮かべていた。
それがなんの涙かは本人さえわからない。
しかし答えでもある。
疑問詞族はそもそも争いを好まない。
Youはそのことを知っていた。
しかし力がある。それを頼りにしてここまでやって来た。
Howがいないのは誤算だったが、Whatに会えたこともまたいい意味で誤算だった。
Youは自身を持って答えた。
「はい! みないい人たちです!」
その時初めて、洞窟の内部へYouの声が響いた。
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