028 ~疑問詞族の長~
その場にいた者がYouに注目した。
「ねぇYouさん、もう少し聞かせてくれる?」
YouはItをIの方に渡した。何も煩わしいからではない。
Youはよいしょ、と言いながら立ち上がり、息を深く吸った。
「そもそも、It様がI様の中に隠れていたのはなぜでしょう。」
それはあの出来事を見ていたものならすぐに分かることだった。
Heでもそのことを覚えていた。
「そりゃ、あれだろ。似ていたからだろうよ。」
「はい、その通りです。It様のスペルであるIがI様のスペルと一緒ですので、おさまりが良かったとでも言いましょう。」
Youは再び息を吸うと、また一つうんと頷いた。
「それと同じようなものです。私たちを包囲したあの?“クエスチョンマーク”は、あの謎の者に身近な存在だった、というだけのことです。去り際に、胸元に戻って行ったのをご覧になりましたか?」
皆はそれぞれ頷いた。しかしそれだけでは理解できないことがある。
そもそもあの謎の者が何者なのか。それがわからなければ?マークとの関係が見えてこない。
「簡単なことです。あのお方が、疑問詞族の長であるWhat様だからです。」
一瞬の静寂、そしてそれは途端に歓声となった。
「にゃに!?っと。」
「なっ! あのおいぼれが、わ、What“ワット”様だってのか。」
「こら、ヒー君! 口を慎みなさい! って言っても実際にお会いしたのは初めてだったけれど……!。」
そう、ここはイングリッシュ・グラム・マーの世界の一国である、疑問詞族が住む洞窟だった。長であるWhatをはじめ、他にも仲間がいる。
その内の一人がHowだった。
What“ワット”は疑問詞の一つ、その意味は「何」、
そして How“ハウ”は同じく疑問詞の一つで、その意味は「どのぐらい・どうやって」などを表す。
それぞれに疑問を問う力がある。
最悪の場合、問われたものは、その存在が消えてしまう恐れもある。
「He様。今回はたまたまWhat様だったからよかったものの、もしWh……。」
「悪かったよ。次からは気をつけるよ。」
単純なところがHeの良いところだ。
しかし話を最後まで聞かないところが玉に瑕だ。
「……いいでしょう。話を戻しましょう。疑問詞族の方々であれば、?マークが伴うことはお分かりかと思います。」
皆がうんうんと頷くなか、一人だけ調子の異なる者がいた。
「そうなんだー。ということは、Itさんみたいなものだね!」
Youはうすうすその異変に気付いていた。どうして、Iがここまで無知なのか。
それとも自分が知りすぎているのか。答えはわからない。
しかしこの疑問がのちに大きな出来事に関わってくることになることを、
Youはまだ知らなかった。
「そう言えば……。」
「どうしました、I様。」
「What様、なんでHowって人がいないって言ったんだろうと思って。」
そう言えば、といってSheもそのことには疑問を呈しているようだった。
Heは耳にもしていないといった様子だ。
この時も答えてくれるのはYouだった。
「答えは簡単です。?マークがスパイだからです。」
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