027 ~一息~
「おい、結局誰だったんだよ、あいつ。」
先程までの争いはなかったとでもいうように、
深い森と洞窟は静まり返っていた。
「それに、Iの、その力ね……。」
Youはぺたんとその場に座り込んでしまった。
Iもその横にしゃがみこんだ。Youに謝りたかったからだ。
「ね、ねぇ、Youさん、その、ご、ごめ……。」
「許しません!」
Iは今まで一番驚いたと言ったように身体をびくつかせた。
その弾みで!の原体も飛び出した。
「と言いたいところですが、この度はI様の勇気に助けられたんですよ。」
「そ、そんな。Youさんがきっかけをくれたんじゃ……。」
「それもそうですが、やはりI様のお人柄とでもいいましょうか。」
YouがIの手を取る頃、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「いやー、っと。やられたふりをするのも大変にゃ、っと。」
「……。」
「あのクエスチョンって言ったかにゃ? っと。あの形は絡まってなかなか外れないからずるいにゃ、っと。」
「……。」
「いやーそれにしても、っと。やられたふりをするのも大変にゃ、っと。」
Sheは博識で情がある。
しかしHeを弟に持つ者ということを忘れてならない。
Sheは笑いながらItに近寄り、スペルのtを取るふりをして両手で大づかみし、力一杯投げ飛ばした。
「とととととととっととーーーーーーぉ!!!っと!」
Itは投げられた勢いで洞窟の壁をくるくると回り出した。一向に停まる気配がない。
「あんたが軽率な行動にでなければこんなことにはならなかったんでしょーが!!!」
Sheの怒号は森に響き、近くの鳥たちを羽ばたかせたようだった。
一方で洞窟の奥に響いたはずの声は一向に反響してこなかった。
謎の者、そしてYouの恋人であるHowなど、
疑問はその洞窟のように深い。そして謎はまだある。
「いえ、It様の行動に問わず、私たちは直に捕らわれていたことでしょう。」
Youは周回するItをひょいとつかみ肩に乗せた。
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