026 ~影の正体~

Iが対抗呪文を唱えたと同時に、Iの背後からいくつもの影が飛び出してきた。

その影はIの背後で整列し、そして円を描き始めた。


「お、お前、なんだその力!」


Iは何が起きているか自分でもわかっていないようだった。

皆が自分に注目して、恥ずかしいぐらいだった。


「え、えっ、みんな、どどど、どうしたの!?」


言った途端、

背後を回っていた影は、一つ、また一つと音もなく飛んでいき、

ついさっきIたちを取り囲んでいた謎の浮遊物を弾いて行った。


Youには気になっていることがあった。

どちらの影も、数はちょうど同じで、二つとも同じような大きさをしている。

そして同じように浮遊する存在。


「もしかして……。」


Youが自分にしか聞き取れないような大きさで何かをつぶやいた。


それが聞き取れたのかもしれない。

謎の者も、ふん、と何かを諦めたようだった。


その瞬間に影がはれ、二つの存在が姿を現わした。


「やっぱり……、クエスチョンだったのね。」


Iたちを包囲していたのは、クエスチョン”?”マークだった。

何体もいたのはただの分身で、「?」の本体は一体だった。

いくつもの影がその原体に収束していくのが見えた。


その途中、Iが召喚した存在、それが「!(エクスクラメーション)」だったのだが、

その!の殺気を感じたことが、?が包囲を緩めたのが原因となったらしい。


!も役目を終え、そして原体の一体がIの背後に姿を消してしまった。


「もう、お手上げね……。」

「ハハハ、もう何が何だか。Iと出会って以来、驚くことばっかりだぜ。」



力なく浮遊している原体の?は謎の者の元に戻って行った。

そしてひょいと片手で捕まれると、懐に入れられてしまった。


その謎の者は踵を返し、また暗闇の内に消え入りようとしていた。


「お、おい! 逃げんなよ!」


その謎の者は一度こちらに振り向くと、一言だけ残して完全に姿を消してしまった。


「立ち去れ。そなたたちが探しているものは、ここにはない。」

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