022 ~鳥の向かう先へ~

「味方? 俺たちに強い味方なんて必要か?」

「あんたね、そこじゃないでしょ。気になるところ。」


Youは確かに たち と言った。

Youの純朴な反応からHowだけが話題になってしまっていたから、

Howたち、と言われて気にもなる。


「たち? たちってどういうこと?」


Youはなお考えながら話している。

いつものように素早く、そして的確に何かを述べる様子がない。


「確かにHow様とは、その仲良くさせていただいていました。しかし、ちょっと厄介なこともございます。」


それがHeやSheの言う禁忌なのか、それとも複雑なだけなのか。

Iにはわからない。気が短いのは、いつでもHeだ。


「要領を得ねぇ話だな。要はどうすんだ? 行くんだろ?」


こういう時、Heの単純なところが助けになる。

今のYouにはそう言った言葉が助けになるのかもしれない。


「そうですね。うん、そうしましょう。現地で、全て話しします。」


「現地?」


「えぇ、地図によればすぐ近くですよ。」


Youは遠くの方を指差した。


YouのすぐそばにいたIは、一緒に指の差す方向をみた。


合図としたように一羽の鳥がその方向に飛んでいく。

羽が風を切る音かと思った。しかし違った。IにはYouの声が、かすかに聞こえた。


「ただいま参ります。How様。」


その声はいつものYouの声ではなく、

優しさに、そして勇ましさに溢れた、でも少し不釣り合いな声であった。


その声を聞いていたのはIだけではない。


「How様、How様……、っと。 もしかしてHow様って! っと!」


YouはItのtをつかんで引き寄せ、そして シー と言った。


その光景を、Iは見て見ぬふりをするしかなかった。



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