014 ~元凶~

Iの気絶と時を合わせるように、Heが戻って来た。


「おい、オレも話に混ぜろってんだ!」


しかし皆の注意はIに向けられていた。


「お前ら、そこまでして俺を……。」

「ヒー君、ちょっとうるさい!」


Heには倒れているIが目に入っていないようだった。

折角戻って来たというのに、またふてくされて遠くへ行ってしまった。


問題はIだ。

今となってはあれだけ痛がっていた右腕を気にする様子もない。

それだけ衰弱しているようだった。


しかし腕は光り続けている。


いくらYouでも、そして博識のSheでもどうしたらいいかわからなかった。

その異変に気付いたのはサブ・ジェクトだった。


「む!? どけい!」


サブ・ジェクトは持ち前の強引さで皆を退けると、何やら呪文を唱え始めた。

Youにはその呪文に聞き覚えがあった。これもまた、先祖から聞いた古い伝承の一つだった。


「プロナーン、プロナウン。プロナーン、プロナウン。」


サブ・ジェクトの詠唱に合わせてIの右腕の光はその強さを増し、

そしてサブ・ジェクトの右腕と連動した。


「プロナーン、プロナウン! プロナーン、プロナウン!!」


サブ・ジェクトが詠唱する呪文は、

イングリッシュ・グラム・マーにおけるpronounを指す。

それは「代名詞」を意味し、Iたちを包括して示す言葉だった。


Iの顔が苦痛に歪んでいく。

その叫びは記念の塔にも届き、そしてこだました。


Iの苦しみがはたと止まった瞬間、その元凶が姿を現した。

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