012 ~サブ・ジェクト様~

「これが主語の民とは……。聞いてあきれるわ!」


絶対的な存在感に、皆が自然とその足を折ってひざまずいた。

たった一人の存在を除いては……。


「おい、お前誰だ。いきなりふざけんじゃねぇこのおいぼれが!」


危うくこの世界から「彼」という存在がなくなるところだった。


「愚か者め!」

「うぉぉぉぉーっ!」


Heは再び吹き飛ばされた。

より遠くに飛ばされたからもう姿さえ見られない。

サブ・ジェクトにとって、この後の話にはHeは邪魔だと考えたのかもしれない。

他の者も、目では追いつつ助けに行くものはいなかった。


「ええい、虫けら一匹どうなっても構わぬわい!」


サブ・ジェクトの大声に塔の松明は今にも消えてしまいそうだった


「おぬしら! 自分たちの使命を忘れたか!!!」


その声の一部は塔に吸い込まれ、

そして反響をしながら上層階へ抜けて行った。

それはまるで竜の飛翔を思わせる。


誰も言葉が出せなかった。

しかしこのままではさらにサブ・ジェクトを激怒させかねない。

腹をくくったのはIだ。この世界に初めて発生した者としての責任も感じていた。


「お、恐れながら、サブ・ジェクト様!」


サブ・ジェクトと目があったIはたちまち委縮してしまった。

しかし声を上げてしまった以上、黙るわけにもいかなかった。


「わ、私たちはついさっきこの世界に呼び出されました。その理由もわかりません。

 わからないまま仲間が増え、そして実はかつてからの付き合いがある者たちという

 ことがわかりました。ですから、使命という使命が未だつかめずにおります。」


HeはIの真横を吹き飛ばされていった。その光景を間近に見ているだけに、

次は自分かもしれないという恐怖に襲われていた。

サブ・ジェクトの前でひれ伏すIは、一心に自分の無事を願った。


「それならば最初からそう言えばいい! まったく、使いの者は一体何をしていたのだ……。」


答えは意外だった。それに使いの者?

Iは、そして他の者も同様に首をかしげた。


まさかこの中に使いがいるのだろうか。

しかしそうは考えづらい。少なくとHeではないだろう。


皆が皆の様子を気配に伺っている内に、サブ・ジェクトが語り出した。


それはこの世界を揺るがす一大事だった。

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