010 ~覚醒~

IはゆっくりとYouの元に近寄っていった。


そしてその足音に合わせるようにして、

今までさんざん敵対していたtheyまでもがYouの元に歩み始めていた。


状況をいち早く理解したのはSheだった。


「まさか、あの3人……。」

「まさかってなんだよ!」


未だ今見ている光景を飲み込めないHeは、Sheを問い詰めることしかできなかった。

SheはそのHeの言葉に被せるように、乱暴に答えた。


「私にはわかりようがない。だって、私にはないんだもの。ヒー君、あんたにもね。」

「おま、その名前で……、なんて言ってる場合じゃねぇか。もう何がなんだかパニックだぜ。」


Iとyou、そしてtheyにあってSheとHeにないもの。

それが三者をつないでいる。


Theyは今まで孤独を感じていた。

なぜ自分だけ他の者たちと異なるのか。

Theyは心から仲間を欲していた。しかしついに現れることはなかった。


Theyはいつしか他と交わることをやめた。

孤独を愛するようになった。しかし自分と言うものを見出すこともできなかった。

暗闇から抜け出せなかった唯一の理由だった。


しかしIとYouが初めて手を取り合ったあの瞬間、Theyの心は心だけで躍動した。

IとYouに同じ匂いを感じたからだ。


TheyはHeとSheの召喚に便乗し、この世界に姿を現した。

そう、YouやSheがあの時に感じた大きな力とはtheyのことだったのだ。


Iの言動によって全てを悟ったYouは、早速行動に移すことにした。

上手くいくかはわからなかった。しかし自信はあった。

なぜなら、youには力があった。


それは覚醒だった。


「すっかり忘れておりました。私youには、“あなたたち”をすべる力があります。そしてI。」

「うん、“私たち”、だね。それにTheyさんも。」


They“ゼイ”は「彼ら・彼女ら・それら」を意味する。

そして別の呼び名を三人称。つまり、HeとSheとルーツは同じということだ。


しかし一人で多くの役割を包括するtheyは、やはり大きな力を持っている。

Heに立ち向かう術はなかった。


「ちっ、ふざけやがって。」

「もうやめなさい。かなうわけない。」


しかしもう恐れる必要はなかった。


Iもyouもtheyも、一人で複数の役割を持つ。

その者たちには共通の呪文があった。


いよいよtheyが合流し、三人が手と手をつなげる距離になった。

最初に口を開いたのはyouだ。


「それでは、まいりましょう。」


最初はためらいを見せたtheyであったが、

Iとyouに手を取られて覚悟を決めたようだった。


そして三者は大きく手を上げた。


呪文が、空に響く。

それは三者の祖先から代々受け継がれた、仲間の言葉だった。


「プルーラル!」


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