009 ~衝突~

Theyと呼ばれた者はIたちと同じ姿形をしていて、未だに光に包まれている。

闇を払われたからなのか、力は最大限に発揮されるようだった。


わずかに動いただけで殺気は放たれ、

感じ取ったHeは最初にとびかかった時の倍の素早さで身を引いた。

いつ手放したかも感じ取れないほどだった。


「なんなんだよ、あいつ!」


Theyは語らない。語り方を知らないのだ。

正体がわからないということは得体がしれないということだ。

周囲に不安しか与えない。


Heは再び臨戦態勢に入った。そしてSheはその援護についた。

これから大きな衝突が始まる。HeとSheはそう覚悟した。


瞬きも許されない刹那の瞬間、両者はお互いに間合いを詰め合った。

一歩下がって一部始終を見ていたSheは、

いつでも何にでも対応できるように身構えていた。

しかしその緊張の最中、両者が衝突する直前にSheは奇妙な現象を見た。


空間の歪みだ。


気づけばHeもTheyも元の立ち位置に戻っており、

周辺の静寂を見ると何も起きなかったように思う。


そしてさらに不思議なことに、

ついさっき衝突が起きたはずのところに、

いつの間にかYouが立っているのが見えた。


「お待ちなさい!」


今までに見たことがないYouの姿だった。

Theyと同様、光に溢れている。


「あなたたち、場をわきまえなさい。」


あなたたちと聞いて、Iは自分の両手がしびれるのを感じた。

胸元まで上げて見るまでもない。

Iの両手は、Youの輝きと連動して同じ光を放っていた。

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