007 ~錯綜~
救出されたIは、HeとSheとともにYouの回復を待った。
その間、ことの経緯を二人から聞いていたIであったが、
Iとしてはわからないことだらけだった。
ようやくYouが口を聞けるようになったときにはすでに辺りは暗くなり始めていて、
いつ施されたかわからないが常にその火を絶やさない松明が塔を照らすばかりだ。
その灯りを不思議そうに眺めながらYouは言う。
記憶が錯綜しているらしい。
しかしSheが言うように、Youにも気がかりなことがあるとのことだった。
「She様がお出ましになる前後に、何かこう、別の力を感じたんです。」
Sheはこれに即座に応じた。いくら記憶が入り混じっているとは言っても、
二人が同じことを感じているのであればやはり間違いはない。
あの時に感じた大きな力は、やはり得体の知れないものだった。
「いえ、でも禍々しいとは違うんです。」
「え?」
予想に反した返答であっただけに、Sheは呆気にとられてしまった。
それと同時に憤りさえ感じていた。
Sheは知恵と鋭い洞察を備えている。その自負もある。
だからと言って、Youが間違えていると思っているわけでもない。
Sheはあの時に起きた出来事を、
もう一度細かく皆に説明し、皆の納得を得ようとした。
その必死な様子に、いつも反抗しているHeでさえSheをからかう気がしなかった。
Sheは信じている。
しかし心の底では認めてもいる。
大きな力を感じたのは確かだが、それがそのまま禍々しいとは言えない。
定かではない。
勘違いかもしれない。
いずれにしても一時の感情に振り回されていることが事実だ。
Sheはその自分を悔い、憤っているのである。
皆が沈黙している内に、あたりはますます暗闇に染まっていった。
松明の灯りは一層強まったように感じ、
ともすれば逆に闇の深さがわかるようになった。
その一角、塔とは真向いの暗闇と灯りが混ざるその境目に、
Iは何かが動くのを視界の端に捉えた。
神経を高ぶらせていたSheは同時に、
いやそれよりも早く異変を察知し、そして反応した。
「誰だ!」
HeとSheはもともと姉弟。
いくら喧嘩が多いとはいっても心はつながっている。
Sheの大声とほぼ同時にHeは跳躍し、一瞬でその対象をその右手に捉えた。
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