005 ~Iの友だち~
Youが握った手はIの手を包んで固く結ばれている。
そしてついさっき脳裏に流れ込んできた時と同じような感覚が続いている。
いやそれよりも強い。例えるならばまるで電撃のようなほとばしりが、Iの身体全身を襲っていた。
不思議なことに痛くもかゆくもない。
しかし一方のYouは人が変わったように、そしてどこか苦しそうに唸った。
「I様には、な、仲良くしていたお友だちが、お、おりましたでしょう。」
Youはあくまでも冷静さを失わないといったように振る舞っているが、しかしその表情はYouの胸の内を物語っていた。声さえ絞り出すようだった。
「えっ? 突然何、お友だち? 男の子? 女の子?」
「その両方です。お二人のお名前は?」
Iに思い出せる友だちは限られていた。
Iは主語の民。それ以上でもそれ以下でもないからだ。
「えっと、えっと、確か彼は……。」
「そう。か、彼です!」
Youが大声を上げると、二人の手の中から一筋の光が豪快に飛び出してきた。
「うわっ!!」
Iは思わずのけぞり、しりもちをつきそうになった。それでもYouはひるむことなく、ますます手に力を込めた。その手はIをぐっと引き寄せ、二人を取り巻く光はその手々から徐々に二人の全身を取り囲んでいった。
「つ、次です。彼の次は……。」
「えっと、彼女は確か……。」
「そう! 彼女のことです!」
一瞬、爆発とともに閃光が走ったように感じられた。
しかし二人の目の前にはゆったりとした光が、
そしてどこか温かな光が手から抜け出した。
まるでそれがYouの魂だったとでもいうかのように、Youは途端に脱力した。
Iは渾身の力を込め、今度はYouを引き寄せた。
しかし自分よりもずっと背が高いYouを支えられるわけがない。
意識を失ったYouはIを覆うように倒れ込み、そしてIはその身の内に姿を隠した。
その時だった。
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