第2話 四角いスイカ

「さや~ おかえりぃ」

「ひっ! そらさん…」

「お願いですから! ぬっ、と出てこないで」

「あはは、ごめんね」

 いつになく素直なそらさん、こりゃ疲れてるな。


「ところで、四角いスイカがあるって知ってる?」

「知ってますよ、そのくらい」

 テレビで見たことがある。たしか、観賞用で味はまずいんだっけ。

「でもあれって、最初から観賞用だったわけじゃないよっ」

「冷蔵庫に入れやすい形にしたら不味くなっちゃったんだよね~」

「はいはい」

「では、私の菱形ちゃんを見に征こうぞ」

「それ、四角形とあまり変わらないのでは!」

「まぁ、こう? 平行だからっ」

 今気づいたんですね? 私にはわかります。


 そらさんは、私をビニールハウスの中に連れ込んだ。

「あけてみたいでしょ~」

「みたーい(棒)」

 目の前には、一斗缶の底をくりぬいたもの。

「せーの!」

 現れたのは不格好な四角いスイカだった。

「う~む、すいかは難しいから失敗したかも」

「ヨシ! 食べてみようか◇」

「いったい何がヨシ! なんですかぁっ」


「時よ止まれッ!」

「へ?」

 これ合わせないとダメ? 

「ウゥリイィィィィィ!」

 ガッ、ドゴッ。

「ふふっ、全然割れてませんよ~」

「ぐぬぬ、持って帰ろっか」

 二人で食べたスイカは、マズいけれど、楽しかった。

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