会うたびに変なコト教えてくるお隣さん

もふ鳩

第1話 きゅうりの絶叫

「おっ、おかえり~ さやちゃん」

「うげっ、そらさん」

 この人は越年 そら、お隣さんだ。高校からの帰宅途中にめっちゃ会う。最近は特に。田舎だからか?

「うげとはなんだ、君のお姉ちゃんに向かって~」

「いつの話ですかぁ、それ」

 歳が近いのもあってか私が小学生ぐらいの頃にはよくお世話になった。だからか、高校生になった私に対しても未だにお姉さんぶってくる。

「ちょっと、そこで待ってて」

 相変わらずマイペースな人だ。


 しばらくすると、緑色のものが入ったビニール袋を押し付けてきた。

「これ、畑のすみで作ったキュウリ、おすそ分けってやつ」

「へぇ~ ありがとうございます」

 そろそろだ。私が帰りにこの人に会いたくない理由……

「ところで、知ってる?」

「きゅうりって絶叫するらしいよ!」

 きたっ、いつものやつ~。そらさんは、私に会うたびに嘘か本当かわからない雑学を脳内に刷り込んでくる。

「実際、人間には聴こえない超音波らしいんだけど」

「ほかの野菜さんとかには聴こえるんだって~」

 だから何だって話だ。けれど、この人に恩を感じている私は合わせるしかないのだが。

「じゃあ、実践してみようか」

 きゅうりを一本、パキっと折ってみせた。

「何も起きませんね~?」

「そりゃ超音波ですからっ!!」

「さやちゃん、いいツッコミだね、わたしゃ嬉しいよ」

「じゃ、またね」

 またね、と言うそらさんの表情かおはどこか穏やかで、ずるい、と思う。


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