第34話 登校日
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翌日からは移動だ。高校生三人を車で駅まで送ってもらい、そこからそれぞれ電車で家に帰る。両親はごちそうを用意して待っていてくれた。家には半月ほど帰っていないわけだけど、テレビ業界にいる二人には私の事がとっくにスタッフ側から伝わっている。それどころか動きが悪いとかダメ出しまでされた。
それから一晩経って登校日。
久しぶりの制服を着て久しぶりの電車に乗り学校に向かう。先生方は生徒の非行の兆しに目を走らせて、生徒の私達は文化祭のことを決める。
とはいえ、既にあらかた決めてあるグループがいるのでとくに反対する要素もなくさくさく決まっていく。うちのクラスはヨーヨーすくいなどの遊戯場になりそうだ。
夏休みの開放感の真っ只中の教室には緊張感がない。だから取り決めも膠着状態にあった。
「hikariさんにあのアホみたいなうさぎ描いてもらうのはどうですかー?」
そんな中いつもふざけている男子がそんな提案をした。『アホみたい』って言ってにやにやとこちらを見て、明らかに敵意がある。
それでも特にショックを受けなかったのは、今日ずっと私はひそひそされていたからだ。番組の影響で直接だったり間接だったりで色々と言われている。中にはひどいものもある。『もっと可愛い子なら写真売れるのに』とか『あんな落書きで金稼げるなんて楽でいいな』とか。そんな中、はっきり言われてもとくに傷つきはしない。
というより、ウケ狙いで人の事を悪く言うくらいなんだから笑いはきっちり取れよ、なんてテレビに染まった風に考えてしまう。教室の空気は真夏だというのに冷え込んでいだ。
「……なんでそんなこと言えるの?」
冷え込んだ教室の中、女子の実行委員がその男子に問う。
「hikariさん、お仕事頑張ってるのになんでそんな風に言うの? どれだけがんばっているか知らないくせに」
そうだそうだと女子達が言う。そう言ってくれるのはもちろん嬉しい。でも、なんというか、私とあなた、ちょっとしか話した事ありませんよね?
これが仲のいい子の言葉なら泣いて喜んでいたかもしれない。でもあまり話したことがない相手だから、その泣いて怒る声に引いてしまう。私ですら泣いても怒ってもいないのに。
学校ってこんなんだっけ?
つまらないとか嫌だとかではないけれど、確実に前とは違うものになっている。
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