第30話 優勝候補
「だから僕は君がなんらかの手段を使って王崎先生に近寄り売り込んだものだと思った。実際、僕ら六人の中で一番有名になるとしたら君なのだし。企画的に君が勝つとおいしいはずだ」
「ちょっと待ってください。一番有名になるって、そんなことないと思います。私達の中で有名なのはふらみんさんやクロさんじゃないですか」
やらせを否定する確かな情報は私は出せない。でも『いずれ有名になるhikariが勝つとおいしいから皆でやらせをする』というのはおかしな話だ。私なんて、親がテレビ関係者なだけでうさぎの落書きが運良く売れただけなのに。親だってそこまで権力はないし番組スタッフが私に媚びても何もいいことないと言える。
「ふらみんちゃんは日本のファッション業界を中心に活躍してる。これは海外で通じるものとはいえない。クロ君も二次元美少女じゃ世界は狙えない。狙えるとしたら老若男女に受けるキャラクタービジネスで、だから君なんだ」
信じられない話だったのにリアリティーが増していく。
世界で人気のキャラクターを思い出してみたら、日本生まれのキャラクターは異常に多い。あの白い猫とか、ゲームの黄色いネズミとか。他にもキャラクターグッズを手に入れるために日本にやってくる外国人旅行者も多いほどだ。
あいすくりんうさぎがそうなるとは思えないけれど、私達六人で一番有名になるとしたらキャラクタービジネスの私である可能性は非常に高い。お洒落や二次元美少女の感覚基準は世界でまったく違う。でもキャラクターをかわいいと思う感情は世界共通なのだから。
いやでも、それがあるとしてもやらせはない。
「でも、だからって皆が私に勝たせたがってるというのはないと思います」
「スタッフから答えを教えてもらったりはしていない?」
「していません」
これだけはきっぱり言える。スタッフさんは私の事をよく気遣ってくれてはいるけれど、それは私が未成年であるためだ。贔屓された覚えはない。
青柳さんはまだ疑うような目でこちらを見ている。
「そもそも、私が答えを事前に知らされているとして、青柳さんはそれを聞いてカンニングするとして、さらに私に外すようお願いするつもりですか?」
青柳さんがどうにか私から解答を知ったら、正解者二人となる。それってどうなるんだろう。企画無効になるのか、次に新たな企画があるのか、賞品山分けとなるのか。
「いや、僕はただクリスタルを当てればいいんだ。僕とhikariちゃんが正解して、その後僕は賞品を辞退し君に譲ると約束する」
「なんで?」
「僕が欲しいのは王崎晶の後継者という肩書だけだから。クリスタルを当てたという事実があるだけでいい」
肩書?
確かにこの番組でクリスタルを当てれば話題となって有名になれるだろう。
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