第25話 人気若手俳優と高校生の交流

「ワー、アメミヤサンダー」

「まさかこんなところであえるだなんてー」


急に片言になったクロさんに、急に知的さをなくした結城君。まぁ素人に何かを言わせようとしたらこんなものだろう。なんとか『緊張している』と画面向こうの人達に解釈してもらいたい。

雨宮さんはこちらに気付くと振り返り、いつも画面越しに見るそのままの微笑みを見せた。


「こんにちは。クロさんに結城さんにhikariさん。クリスタル探しは順調ですか?」


雨宮さんは大人の俳優で、今回オフだというのに高校生相手だというのに丁寧に話しかける。すぐに私達の名前を呼べるなんて地味にすごい。


「雨宮さんは映画の役作りですか?」

「ええまぁ。それとクリスタル探しもついでに。一応権利がありますので」

「私達、夏休みの宿題をしようとしていて。こちらでやってていいですか?」

「構いませんよ。夏休みの宿題なんて懐かしいですね」


なんとか私がスタッフの希望通りに進めておく。後ろにカメラがいて、許可を取るというのもおかしな話だけど。

これで番組としては正解だ。あとは場慣れした雨宮さんが動かしてくれる。


「学業の両立は大変ですね。とくにクロさんhikariさんはお仕事もありますし」

「それもあるんですけど、さすがにこの夏はちょっと遊びすぎました。ここの生活が新鮮で楽しすぎたので」

「それはなによりですね。大丈夫、hikariさんならやるべき事はしっかりこなせますよ」


なごやかに会話が進む。そうか、この人はナレーターとして私達を見ていたのだろう。だから私達の事はそれなりに知っている。クロさんのように、私がやる事はやるやつと思ってくれたようだ。


「皆さん課題作品制作は順調ですか?」

「色々と構想は練っているんですがまだできてなくて」

「俺はできました。まぁデジタルなんで、まだ直すとこ見つかるんですけど」

「僕も乾かした仕上がり次第です」


私、クロさん、結城君と答えて、うち二人は完成間近と判明しとんでもなく疎外感がある。

もしかして出演者でまったくできていないの私だけ?


そういえば太陽さんは彫刻部屋で木材と針金で芯を作っていたし、青柳さんは登喜子さんと一緒にいるところをよく見かける。ふらみんさんは私が毎晩のようにお互いの部屋に遊びに行ってたのにそれもなくなった。

皆それぞれ作品を作り出しているのでは?


「クロさんと結城さんは筆が早いですね。もう少し時間をかけても良いのでは?」

「あ、いや、俺ら高校生なんで。早めに引き上げるし、登校日とかもあるんすよ。その前日から一時帰宅するんで、その間作品作れないから早めにやらないと」

「登校日、それもありましたね。いつ頃ですか?」

「24日前後っすね。日にちは微妙に差があるけど、スタッフさんも忙しいんでまとめて送ってもらいます」


しかも登校日とその前後で時間を取られるなんて、私詰んでない?

幸い私はタブレットがあればどこでも描けるけど、今ここでできないことが移動中や自宅でできるとは思えない。それにクリスタル探しもあって、そっちはここじゃないとできないのに。

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