第23話 進路問題
「hikariは宿題を……山程抱えてるみたいだな。俺は一個上だからって教えてやれねーぞ」
「そんな、クロさんなら教えてくれると思ったのに!」
「残念ながら俺は頭があまり良くない」
あまり誇れないことをはっきり言ったクロさん。一つ年上のこの人と、見るからに頭の良さそうな結城君の協力さえあれば宿題なんてすぐ終わると思っていたのに。そう簡単にはいかないらしい。
にしてもクロさんがそこまで自虐的に言うなんて。
「でも、そんなことないでしょ。絵を描く人って頭いい人多いじゃないですか」
「頭がいいのは絵を描く集中力を勉強に回せるやつだけだ。俺は集中力を全部絵につっこんだ。再利用不可」
そういうものだろうか。クロさんだってあんな細かい絵を描くのならかなりの集中力の持ち主であることは確かで、勉強をやる気がないだけだと思う。
「クロさん、そんなんで卒業後はどうするんです?」
「とりあえず今まで学業優先してセーブしてた分の仕事をしてみる。それで力不足を感じたらワークショップとか勉強する方法は山程あるし、諦めるならやり直しもきく年だし」
「なるほど……」
高校生で仕事を受けているという点で私とクロさんは同じだ。だからこの進路話はメモ取りたいほど参考になる。
「hikariは進学か? いやでもイラストすごい売れてるもんな。このままイラストレーターでもやってけそ」
「それが悩み中で。私、今まで全然絵の勉強してこなかったし、あいすくりんうさぎ以外は描いてないし、このままやってける自信がなくて」
「じゃあ美大か專門でちゃんと学ぶとか?」
「美大って難関ですよね」
「ピンキリじゃねえの。そりゃあ青柳さんや太陽さんのところは難関だけど、こうして課題をぎりぎりでもちゃんとやろうとする奴なら今からでも入れるだろ」
私の学力はそこまでではないことはとっくにクロさんに見抜かれている。でも美術系の進路は課題さえ出せればなんとかなるような学校もある、というのは勇気が出る話だ。
この通り、私はギリギリでも宿題をやろうとするつもりはある。なんだかんだで宿題や仕事は期限内に仕上げてきたんだから、最低限はクリアできるだろう。
「結城は? 美大行くの?」
「はい。青柳さんのところを目指してて。来年からは受験対策の絵を習うつもりです」
さっき難関だって話してたところなのに結城君は普通に言うなぁ……という言葉は飲み込んでおく。
まぁ、彼はそういう人なんだよな。住む世界が違うなんて言いたくはないけれど、今までの人生が違う。この企画がなければすれ違うこともなかっただろう。
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